店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~
「な、なにこれ……お茶会……?」

 想像とはかけ離れた状況に、ジュニアはただただ呆然とする。
 その後ろをのんびりと歩いてきたウィリアムが、立ち尽くす彼を追い抜いてイヴの側に腰を下ろした。
 それだけで、またビクンと身体を震わせたルーシアに苦笑いを浮かべつつ口を開く。

「だから言っただろう。決闘などありえないと。イヴとルーシアは友達だよ」
「で、でも……王立学校では、ルーシアさんがよくイヴさんに辛く当たって……」
「それね、演技。今のイヴに縋り付いてプルプルしてるのが、本来のルーシアだから」
「え、演技ぃ!? なんのためにっ!?」

 続いて、えっちらおっちらマンチカン伯爵の手を引いてきたオリバーが口を挟んで、ジュニアは混乱を極める。
 彼が王立学校で見てきた通り、ルーシアは確かにイヴを目の敵にしているように振る舞ってきた。
 しかし、それは父であるメイソン公爵に命じられ、校内での言動を見張る取り巻き達の目があったからで、決して彼女自身が望んだことではない。
 オリバーが国外で愛想のいい男を演じているように、ルーシアもまた父の意に沿う気位の高い強い女を演じてきたのだ。
 けれど、本当の彼女は、大人しくて引っ込み思案な女の子だった。
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