店長代理と世界一かわいい王子様 ~コーヒー一杯につき伝言一件承ります~

6 女の子達の友情

 純血回帰主義を掲げるメイソン公爵家では、より純血に近い子供を得るという大義名分の元、代々の当主が平然と大勢の愛人を囲ってきた。
 ルーシアの父である、現メイソン公爵も然り。

「それを棚に上げて、フォルコのおじ様を薄情者呼ばわりしたのよ、あの父は。自己を客観的に見る能力が著しく欠如しているのでしょうね」

 ルーシアが『カフェ・フォルコ』の前で呟いた、私生児のくせに一人前に家名を背負っていい気なものだ、なんていうのも、本当はイヴではなく自身を皮肉った言葉だったのだ。
 愛人の産んだルーシアがメイソン公爵家の最高傑作なんて呼ばれることに、本妻やその子達がどれほど屈辱を覚えたのかは、推して知るべしだろう。
 そんな事情を聞かされたジュニアは、さすがに気まずそうな顔をした。

「じゃ、じゃあ……あの金貨のやりとりは……?」
「あれは〝この金貨でおいしいお菓子をいーっぱい買ってきてね。おつりはいらないわ〟を最大限ツンツンした感じで伝えたんですよね、ルーシアさん?」
「ええ、大階段の陰で父の取り巻きが聞き耳を立てているのに気づいたものだから……。金貨を投げつける演出にしてもよかったんだけど、それだとカップにぽちゃんしちゃいそうでしょう?」
「イヴさんが、ウィリアム様を煩わせてるっていうのは……?」
「私が、ウィリアム様にお世話になりまくっているのは事実ですもの」
「あのね、イヴ。私が言いたいのはそういうことではなくてね。あなたが、ウィリアム様のお気持ちも考えずに気安くモフモフするから……」
「んんっ……そこまでにしようか」
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