すずらんを添えて 幸せを
「えっと、あなたは…」

声が喉に張り付いたように、上手く出てこない。

するとその女性は、にっこりと私に笑いかけた。

「お帰りなさい。ずっと待ってたのよ」

「いえ、あの…」

思わず否定してから、私は視線を落として考えた。

(そうか、この人はお姉ちゃんを手に入れようとしている。それを防ぐには、私が代わりに…)

そうだ。
それしか方法はない。

私は意を決して顔を上げると、大きく1歩踏み出した。

その時だった。

「だめだ、蘭!」

どこからともなく尊の声が聞こえてきたと思ったら、グイッと強い力で腕を引かれた。

そのままバランスを崩して、私は後ろに倒れ込む。

誰かと身体がすれ違った気がして、急いで視線を上げる。

だがまたまばゆい光が放たれ、思わず目を背けた。

再び暗闇が戻って来た時…
尊の姿はどこにもなかった。
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