すずらんを添えて 幸せを
第五章 必ず助ける
「蘭!!」

大きな声で名前を呼ばれて、私は呆然としながら顔を上げる。

「蘭!良かった、無事で。怪我はない?どこも平気?」

「お姉…ちゃん」

駆け寄って来たお姉ちゃんは、私をぎゅっと抱きしめる。

「どう、して?お姉ちゃん、病院は?」

「今朝退院して、そのままお父さんの車で連れて来てもらったの」

「なんでそんな…。無茶しないで」

「無茶なのは、蘭の方でしょう?どうしてこんな遠くまで…。私の為に、なんてことを」

お姉ちゃんは、私を抱きしめたまま身体を震わせて涙を流す。

私はぼんやりと視線をさまよわせた。

「ここ、どこ?」

「富士山の登山口よ。お父さんが、尊くんのスマホのGPSをたどってここに着いたの」

「尊の…」

そう口にした途端、私は一気に声を上げて泣き始めた。

「お姉ちゃん!尊が、尊が!」

「蘭?!落ち着いて、どうしたの?」

「尊が、私を助けて、代わりに尊が!!」

泣き叫ぶ私の声を聞きつけて、お父さんとお母さんも駆け寄って来た。

「蘭!無事だったのね。良かった…」

「どうした?尊くんはどこに?」

「私のせいで、尊がっ!!」

私はとうとう膝を折って、その場に泣き崩れた。
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