すずらんを添えて 幸せを
「蘭、少しでいいから食べて。ね?」

あの後、私はお父さんに抱えられて車に乗せられた。

登山口近くの駐車場には、尊の車がそのまま残されていて、それを目にした私は、ひときわ大きく泣き声を上げた。

近くの宿に泊まることになり、部屋に入ってからも散々泣き続けた私は、力尽きたようにぐったりと壁にもたれる。

お姉ちゃんは、夕食のご膳を私の前に運んで、優しく気遣うように声をかけてくれた。

「蘭、今はしっかり食べて体力つけなきゃ。あなた、まだやることがあるんでしょう?」

まっすぐに私の目を見て問いかけるお姉ちゃんの言葉に、だんだん頭の中がクリアになっていく。

(そうだ、ここでぼんやりしている訳にはいかない。私が必ず尊を助けるんだ!)

お姉ちゃんに頷くと、私は身体を起こして箸に手を伸ばした。
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