すずらんを添えて 幸せを
第六章 二人だから
翌朝。
日が昇ると、私はすぐに起きて身支度を整えた。

どんなに止められても、尊を助けに行くつもりだった。

お姉ちゃんも何も言わずに着替えを始める。

「まったく…。二人とも頑固なところまでそっくり」

呆れたように言って、お母さんとお父さんも出かける準備をする。

そしてお父さんの運転で、昨日と同じ登山口の駐車場までやって来た。

「こっちよ」

私は昨日のことを思い出しながら、みんなを道案内する。

「絶対に離すなよ」と手を繋いでくれた尊の顔が頭に蘇り、また涙をこらえた。

すずらんの花をたどり、川に行き着く。

「あ、この川だわ!間違いない」

お母さんが駆け寄ってかがみ込む。

「あの時と同じ川の流れ」

そう言って両手で水をすくい、ゆっくりと口にした。

「美味しい。あの時、私と鈴と蘭を助けてくれてありがとう」

呟くお母さんの隣でお姉ちゃんもしゃがみ、同じように水を少し飲んだ。

私達はさらに上へと登ってあの石碑にたどり着く。

「日の本の 大和の国の 鎮とも 座す神かも 宝とも 生れる山かも」

あの言葉を呟くと、大きな地鳴りと共に地面が揺れ始めた。

「キャー!」

思わず悲鳴を上げるお姉ちゃんとお母さんを、お父さんが抱きしめる。

私は動じることなくじっと岩肌を見つめていた。

やがて地鳴りと揺れが落ち着くと、昨日と同じ滝が眼前に現れた。
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