すずらんを添えて 幸せを
「私の声が聞こえますか?もう一度あなたに会いに来ました」

両手を組んで目を閉じると、私はあの人に語りかけた。

「お願い。どうか答えて」

祈るように呟くと、やがて辺りがパーッとまばゆい光に包まれた。

「あなたが…?」

光の中に佇む着物の女性に、お母さんが話しかける。

「あの時、私とお腹の中にいた鈴と蘭を助けてくれたのは、あなたなのね?」

黙ったままの女性に、お母さんは更に続ける。

「助けてくれて、本当にありがとうございました。心から感謝します。あなたのおかげで今もこうして、私は大切な娘達と一緒にいられます。あなたが子どもを望んでいることは分かっています。だけどお願いです。どうか私達から大切な娘を奪わないで。鈴も蘭も、かけがえのない娘なんです。どうか、お願いします」

お母さんが頭を下げると、女性は何も言わずにスッと姿を消した。

「待って!」

思わず追いかけようとするお母さんを、私は手で遮った。

「お母さん、私達に任せて」

そう言ってお姉ちゃんを見ると、頷き返してくれる。

「行こう、お姉ちゃん」

「うん。行こう、蘭」

私達は手を繋いで光の中に足を踏み入れる。

「鈴!蘭!」

「大丈夫よ、必ず帰って来るから」

振り返ってお母さんに笑いかけると、私達はゆっくりと歩き始めた。

「入り口開けて待ってるからね!」

「何かあったら、お父さんがすぐに助けに行くからな!」

二人に背を向けたまま、私達は手を振った。
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