すずらんを添えて 幸せを
二人でシチューとサラダを食べると、私はソファに戻り、テレビのニュースを見ていた。
「蘭、紅茶飲むか?」
「うん、ありがとう」
尊がマグカップにミルクティを淹れてローテーブルに置いてくれる。
自分にはコーヒーを淹れたらしく、片手でマグカップを持ったまま私の隣に座った。
テレビでは番組の予定を変更して、地震に関する情報をアナウンサーが読み上げ、有識者に解説を求めていた。
「今回の地震の震源地は富士山にも近いです。先月にも、震度3程度の地震が2回観測されました。やはり気になるのは富士山の噴火についてですが、ここ最近繰り返される地震は、富士山の噴火の予兆という可能性はあるのでしょうか?」
「現時点では何とも言えませんが、富士山はマグマが動いて噴火するタイプの火山なので、噴火前に予兆はあると考えられます。富士山の一番最後の噴火は1707年の宝永大噴火ですが、噴火の49日前に宝永の大地震が起こり、余震も続きました。噴火直前の地震は予兆の地震と考えられますが、それより前の地震が大地震の余震だったのか、噴火の予兆だったのかの判断は難しいですね。例えば1986年の伊豆大島の噴火や、1983年の三宅島の噴火では、マグマが火山の下で動き始めて地震が起こり、その地震から2時間後に噴火しました」
「宝永の大噴火から300年以上経つ訳ですが、富士山がこのまま噴火しないとは考えられませんか?」
「このまま噴火しない、ということはないと思います。富士山の地下15㎞程のマグマ溜まりに動きがあり、『深部低周波地震』という地下深部のマグマと連動して起こる地震が発生しています。よって、活動が完全に止まるとは考えられません。地震についてですが、富士山から遠い地域で大きな地震が起こってもそんなに影響はありませんが、富士山に近い東海地方でマグニチュード8以上の地震が発生すると、富士山の噴火やマグマの動きに何かしら影響があるかもしれません」
「では次に、富士山噴火ハザードマップについてですが…」
食い入るようにテレビを見ていた私は、ようやく目を逸らし、うつむいて小さくため息をつく。
「蘭、どうした?」
いつもと様子が違うと思ったのか、尊が控えめに声をかけてきた。
「ううん、何でもない」
そう言った時、スマートフォンにピコン!とメッセージの着信があった。
急いでポケットから取り出して、画面を開く。
一気に顔色を変えた私に、尊が肩に手を置いて尋ねてきた。
「誰からだ?何かあったのか?」
「お母さんから。お姉ちゃんが、また倒れたって…」
一瞬息を呑んでから、尊はすぐさま立ち上がる。
「病院へ行こう。車で送る」
私も頷いて立ち上がった。
「蘭、紅茶飲むか?」
「うん、ありがとう」
尊がマグカップにミルクティを淹れてローテーブルに置いてくれる。
自分にはコーヒーを淹れたらしく、片手でマグカップを持ったまま私の隣に座った。
テレビでは番組の予定を変更して、地震に関する情報をアナウンサーが読み上げ、有識者に解説を求めていた。
「今回の地震の震源地は富士山にも近いです。先月にも、震度3程度の地震が2回観測されました。やはり気になるのは富士山の噴火についてですが、ここ最近繰り返される地震は、富士山の噴火の予兆という可能性はあるのでしょうか?」
「現時点では何とも言えませんが、富士山はマグマが動いて噴火するタイプの火山なので、噴火前に予兆はあると考えられます。富士山の一番最後の噴火は1707年の宝永大噴火ですが、噴火の49日前に宝永の大地震が起こり、余震も続きました。噴火直前の地震は予兆の地震と考えられますが、それより前の地震が大地震の余震だったのか、噴火の予兆だったのかの判断は難しいですね。例えば1986年の伊豆大島の噴火や、1983年の三宅島の噴火では、マグマが火山の下で動き始めて地震が起こり、その地震から2時間後に噴火しました」
「宝永の大噴火から300年以上経つ訳ですが、富士山がこのまま噴火しないとは考えられませんか?」
「このまま噴火しない、ということはないと思います。富士山の地下15㎞程のマグマ溜まりに動きがあり、『深部低周波地震』という地下深部のマグマと連動して起こる地震が発生しています。よって、活動が完全に止まるとは考えられません。地震についてですが、富士山から遠い地域で大きな地震が起こってもそんなに影響はありませんが、富士山に近い東海地方でマグニチュード8以上の地震が発生すると、富士山の噴火やマグマの動きに何かしら影響があるかもしれません」
「では次に、富士山噴火ハザードマップについてですが…」
食い入るようにテレビを見ていた私は、ようやく目を逸らし、うつむいて小さくため息をつく。
「蘭、どうした?」
いつもと様子が違うと思ったのか、尊が控えめに声をかけてきた。
「ううん、何でもない」
そう言った時、スマートフォンにピコン!とメッセージの着信があった。
急いでポケットから取り出して、画面を開く。
一気に顔色を変えた私に、尊が肩に手を置いて尋ねてきた。
「誰からだ?何かあったのか?」
「お母さんから。お姉ちゃんが、また倒れたって…」
一瞬息を呑んでから、尊はすぐさま立ち上がる。
「病院へ行こう。車で送る」
私も頷いて立ち上がった。