すずらんを添えて 幸せを
第十二章 恋人同士
「おはようございます。よろしくお願いします」

翌朝。
音楽室に集まったコンクールメンバーは、立ち上がって先生に挨拶する。

「おはよう。早速始めるぞ」

「はい!」

地区大会を突破したとはいえ、次の舞台は強い学校ばかり。

そこからまた勝ち上がるには、今の演奏のままではいけない。

みんなで気を引き締めて、1秒も無駄にせず練習に集中する。

奏也先輩のソロの部分になり、いつものように美しい音色が響く。

しばらくして指揮を止めた先生は、手を顎にやって少し考え込んでから顔を上げた。

「昨日の審査員の講評で、奏也のソロが秀逸だったと書かれていた」

ひゃー!すごい、さすが先輩!と私は心の中で歓喜の雄叫びを上げる。

「奏也のソロの後半、オブリガード吹いてるのは二人だよな?」

「はい。蘭と美春です」

奏也先輩が答えると、先生は私を見た。

「1回、蘭だけで吹いてみてくれ。じゃあ、奏也のソロから」

へ?と戸惑う暇もなく、私は慌てて楽器を構える。

奏也先輩がゆったりしたテンポでソロを奏で、ワンフレーズ聴いたところで、私も大きく息を吸ってからたっぷりと対旋律を響かせた。

先輩の音と私の音が重なり、綺麗なハーモニーとなって空気を震わせる。

吹き終わると先生は、うーん…と思案してから、何かを決めたように私達を見た。

「この部分、県大会では奏也のソロと蘭のオブリガード、二人でいく」

ひえっ!と、今度こそ私は驚いて仰け反る。

「よし、頭から通すぞ」

はい!というみんなの返事にも乗り遅れ、私は一人アワアワしていた。
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