すずらんを添えて 幸せを
「今日の練習はここまで」

「ありがとうございました!」

やっと終わった、とホッとした瞬間、サラリと先生が爆弾発言をした。

「あ、奏也と蘭は居残りレッスンな」

ひいーー!!と、もう今日何度目か分からない心の悲鳴を上げる私。

広い音楽室で、先生の前には私と奏也先輩だけ。

これって、コンクール本番よりも緊張するのは気のせいでしょうか?

至近距離の先生からものすごいプレッシャーをかけられ、私は必死に演奏する。

「おおー、いいな。なかなかいいぞ。もっといじりたくなる。蘭、奏也の音を食ってやる、くらいの気持ちでもっと前に出ていいんだぞ。やってみろ」

「はははい!」

先輩を食うなんて、出来ないに決まっているけど、とにかく先生に言われた通りにやってみる。

「そうそう、そんな感じ。奏也が愛を歌うのに、お前も応えるんだ。聴いている人に、愛する二人の切ないラブシーンを思い浮かばせるようにな」

むむむ無理です!と言う暇も与えられず、何度も、もう一回!と繰り返し吹かされる。

「いいぞ!デキてきたな、お前達」

「いえ、デキてません!」

「いや、いい感じにデキてる。自信持て」

「ですから、デキて…」

すると奏也先輩が小声で止めた。

「蘭、そのデキてるじゃないから」

…え?と私が固まると、またもやご機嫌で先生が指揮棒を構える。

「よし、もう一回!お前達の愛をたっぷり聴かせてくれ」

マウスピースをくわえながら、デシュカラ、デキテマシェン…と呟き、私はまた深く息を吸った。
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