すずらんを添えて 幸せを
夕飯を食べ終わると、私は自分の部屋のベッドに寝転がる。

スマートフォンを手に、なんとなく最近のメッセージを読み返してみた。

尊からは、イギリスに着いた日の報告と、数日前に綺麗な景色の写真が送られてきた、その2回だけ。

どちらも短いやり取りで、友達との挨拶程度だ。

(これでつき合ってるなんて、言えないよね)

そもそも告白された覚えもなければ、した覚えもない。

好きだとか、恋人だとか、そんな言葉も二人の間で出てきたことはない。

(でも私の中では、尊は大切な人なんだけどな。そばにいてくれると安心するし、ふざけてしゃべってると楽しいし、いざという時は頼りになるし。いや、それだと単なる隣のうちのお兄ちゃんってだけか)

あの富士山での出来事は、つり橋効果みたいに気持ちが昂ぶっていただけなのかもしれない。

日常生活に戻ってからは、今まで通り時々顔を合わせて何気ない会話をするだけだった。

(ってことは、やっぱり単なるお隣さんだよね)

人を好きになるって、どういうことなんだろう?

相手にドキドキしたり、胸がキュンとしたり。

そんな症状が出れば恋なのかな?

考えてみても、やっぱり今の自分にはなんだかピンと来なかった。
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