すずらんを添えて 幸せを
翌日。
音楽室に部員全員が集まっていた。

「えー、3年生のみんな、本当にお疲れ様でした」

先生の言葉に、早くも涙ぐむ部員達。

昨日の東関東大会の結果は銀賞。
その瞬間、今年のコンクールの挑戦は終わった。

3年生は仮引退となり、来年3月の定期演奏会まで一緒に演奏することはない。

「思えば、入学して来た当初はまだ幼くて練習にも集中出来なくて、大丈夫かな?この子達って心配してた」

3年生達が苦笑いする。

「それが今や、我が校始まって以来の東関東進出を成し遂げたんだもんな。いやー、すごいよな、俺の力って」

ガクッとみんなが肩を落として笑い出す。

「本当によくやってくれた。でも人間は欲深いな。東関東の次は全国大会って、いやでも夢見てしまう。2年生と1年生は、3年生の技術と想いをしっかり受け継いで、また新たな挑戦を始めよう。3年生も、卒業してもサポートしてやってくれ」

「はいっ!」

「よし。じゃあとにかく今日は楽しもう。お疲れ様!乾杯!」

「かんぱーい!」

あとはみんなで、用意された料理やお菓子を食べながらワイワイと盛り上がる。

写真を撮ったり、即興で演奏会まで始まり、先生は、お前達、やっぱり音楽バカだなと笑った。

「よし、それなら最後に1曲吹くか?」

先生の提案に、みんなはワーッと盛り上がる。

いそいそと楽器を準備して、いつもの配置で座った。

選んだ曲は、私達の十八番。
定期演奏会のアンコールでいつも演奏する、手拍子やかけ声も挟むノリの良いポップスだった。

楽譜なんていらない。
みんな身体が覚えている。

先生の楽しそうな指揮に、私達も吹きながら顔を見合わせて笑顔になる。

最後の音は引っ張って引っ張って…、ジャン!と派手に決めた。

「3年生、お疲れ!ありがとう!」

先生の言葉に、私達もありったけの感謝を込めて拍手した。
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