すずらんを添えて 幸せを
「蘭、帰り一緒でもいいか?」
楽器を片付けていると、奏也先輩に声をかけられた。
隣にいたくるみが、ササーッと忍者のように遠ざかり、小さく手を振ってから部屋を出て行く。
呆気に取られた私は、一緒に帰る相手がいなくなり、奏也先輩と肩を並べて学校を出た。
「蘭、俺さ。実は、音大を受験しようと思ってるんだ」
えっ?!と私は思わず先輩の顔を覗き込む。
「ほんとですか?すごい!先輩なら受かりますよ。わー、音大で更に上手くなっちゃうんですね、先輩。あ、今のうちにサインもらっておかなくちゃ」
「おいおい、まだ受かってもないのに」
「ううん。私には見えますよ。プロのサクソフォニストとしての輝かしい先輩の未来が」
目を細めて遠くを見ながら言うと、先輩はプッと吹き出す。
「エセ占い師だな」
そしてふと真顔に戻った。
「でも音大を受けようと思ったのは、蘭のおかげなんだ」
「えっ?まさか!」
「いや、本当だ。コンクール曲があのまま、ただ単に俺だけのソロなら、ここまで音楽への情熱は湧いてこなかったと思う。蘭と一緒に音を重ねて、音楽を作り上げていくのが楽しくて面白くて。これはやめられないって思った。どっぷりハマったって感じ」
先輩は立ち止まって私に向き直った。
「蘭、今までありがとう。恋人のフリしろとか言って、ごめんな。けど俺はめちゃくちゃ幸せだった。吹いてる間は、蘭は俺だけを見て俺への気持ちを音にしてくれる。すごく満たされた気分だったよ」
そう言って先輩は、リュックの中に手を入れて、小さな花束を取り出した。
「これを、蘭に」
私は思わず息を呑む。
男の人から花束をもらうなんて、初めてのことだった。
「本当にありがとう、蘭」
「いえ、そんな。私は何も…」
「受け取って欲しい。蘭の為の花束なんだ」
私はおずおずと手を伸ばして受け取る。
小さくて綺麗な白い花束。
「デンファレっていう花なんだ。ランの1種だって。白いデンファレの花言葉は純粋な愛。俺の蘭への気持ちを、この花に込めて贈るよ」
えっ…、と私は手にした花束に目を落とす。
「蘭、俺は恋人のフリじゃなく、蘭への偽りない気持ちを音にしてたんだ。今でも、いや、あの時よりも蘭が好きだ。俺はその気持ちを胸に必死に練習して、必ず音大に合格してみせる。だから3月の定期演奏会でまた会った時、返事を聞かせてくれないか?卒業しても、俺と会って欲しい。本当の恋人として」
先輩に見つめられて、私は何も言葉が出て来ない。
手にした花束を、ただきゅっと握りしめる。
先輩はフッと表情を和らげた。
「そんな困った顔するなよ。今は答えなくていいから、ゆっくり考えてみて。案外、いつも近くにいた俺がいなくなって、会いたくてたまらなくなるかもよ?」
そう言ってクスッと笑うと、じゃあな!と手を挙げて、いつものようにタタッと去って行った。
楽器を片付けていると、奏也先輩に声をかけられた。
隣にいたくるみが、ササーッと忍者のように遠ざかり、小さく手を振ってから部屋を出て行く。
呆気に取られた私は、一緒に帰る相手がいなくなり、奏也先輩と肩を並べて学校を出た。
「蘭、俺さ。実は、音大を受験しようと思ってるんだ」
えっ?!と私は思わず先輩の顔を覗き込む。
「ほんとですか?すごい!先輩なら受かりますよ。わー、音大で更に上手くなっちゃうんですね、先輩。あ、今のうちにサインもらっておかなくちゃ」
「おいおい、まだ受かってもないのに」
「ううん。私には見えますよ。プロのサクソフォニストとしての輝かしい先輩の未来が」
目を細めて遠くを見ながら言うと、先輩はプッと吹き出す。
「エセ占い師だな」
そしてふと真顔に戻った。
「でも音大を受けようと思ったのは、蘭のおかげなんだ」
「えっ?まさか!」
「いや、本当だ。コンクール曲があのまま、ただ単に俺だけのソロなら、ここまで音楽への情熱は湧いてこなかったと思う。蘭と一緒に音を重ねて、音楽を作り上げていくのが楽しくて面白くて。これはやめられないって思った。どっぷりハマったって感じ」
先輩は立ち止まって私に向き直った。
「蘭、今までありがとう。恋人のフリしろとか言って、ごめんな。けど俺はめちゃくちゃ幸せだった。吹いてる間は、蘭は俺だけを見て俺への気持ちを音にしてくれる。すごく満たされた気分だったよ」
そう言って先輩は、リュックの中に手を入れて、小さな花束を取り出した。
「これを、蘭に」
私は思わず息を呑む。
男の人から花束をもらうなんて、初めてのことだった。
「本当にありがとう、蘭」
「いえ、そんな。私は何も…」
「受け取って欲しい。蘭の為の花束なんだ」
私はおずおずと手を伸ばして受け取る。
小さくて綺麗な白い花束。
「デンファレっていう花なんだ。ランの1種だって。白いデンファレの花言葉は純粋な愛。俺の蘭への気持ちを、この花に込めて贈るよ」
えっ…、と私は手にした花束に目を落とす。
「蘭、俺は恋人のフリじゃなく、蘭への偽りない気持ちを音にしてたんだ。今でも、いや、あの時よりも蘭が好きだ。俺はその気持ちを胸に必死に練習して、必ず音大に合格してみせる。だから3月の定期演奏会でまた会った時、返事を聞かせてくれないか?卒業しても、俺と会って欲しい。本当の恋人として」
先輩に見つめられて、私は何も言葉が出て来ない。
手にした花束を、ただきゅっと握りしめる。
先輩はフッと表情を和らげた。
「そんな困った顔するなよ。今は答えなくていいから、ゆっくり考えてみて。案外、いつも近くにいた俺がいなくなって、会いたくてたまらなくなるかもよ?」
そう言ってクスッと笑うと、じゃあな!と手を挙げて、いつものようにタタッと去って行った。