すずらんを添えて 幸せを
部屋に帰った私は、花瓶に花を活けて机の上に置く。

自分の部屋に花を飾るなんて、よく考えたら初めてだ。

ベッドに座って、クッションを胸に抱えながらぼんやりと綺麗な花を見つめた。

(デンファレ。ランの1種か…)

私の名前が蘭だから、先輩はこの花を選んでくれたのだろう。

気遣いは嬉しいけれど、何だろう?この違和感は。

それに返事はどうすれば?

(まぁ、3月までまだ時間あるしね。今は考えなくていいか)

それよりも、明日からの部活の方が気になる。
3年生が抜けて新体制になるのだ。

新しい部長、副部長、コンサートマスター、パートリーダー、セクションリーダー。

決めることはたくさんある。

(次の目標に向かってがんばろう)

小さく気合いを入れた時、スマートフォンにメッセージの着信があった。

「あれ、尊?珍しいな」

早速画面を開いて読んでみる。

『明日の夕方、羽田に着く便で帰るよ。お土産渡したいから、うちに取りに来てくれる?19時には着くと思うんだけど』

えっ!と私は思わず声に出して驚く。

「尊、帰って来るんだ!そっか、2か月経ったもんね。ほら!私の言った通り、あっという間だったわよーだ。へへん!」

そのことが嬉しいのか、尊と会えるのが嬉しいのか、私は深く考えずにただスマートフォンをぎゅっと胸に抱えて微笑んだ。
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