すずらんを添えて 幸せを
「父さんにさっき話したことを蘭にも伝えるよ。俺は蘭のことが誰よりも好きだ」
私はハッと息を呑む。
尊はゆっくりと言葉を続けた。
「生まれた時からそばにいて、ずっと一緒に大きくなって、あまりに近かったから、改めて言葉にしてこなかった。だけど俺はいつだって蘭のことを想っている」
「…尊」
「さっき父さんにこっぴどく叱られたよ。言葉で伝えることの大切さ、一緒にいられることのありがたさを何も分かってない!って。確かにそうだよな。俺は勝手に、蘭にも俺の気持ちが伝わってると思い込んでた。蘭はまだ15才だから、つき合ってデートしてって話は、もう少し先だろうと思ってたんだ。だけど心は繋がってるって、うぬぼれてた。まさか他の男が蘭に告白するなんて、考えてもみなくて。父さんに怒られたよ。蘭なら言い寄って来る男はたくさんいるって。そうだよな、高校生だもんな。普通に恋愛したっておかしくない」
うつむき加減でひとり言のように話してから、尊はもう一度正面から私を見据えた。
「蘭、改めて俺の気持ちを伝える。俺は蘭が好きだ。明るくて可愛くて、時々おせっかいでちょっと大人ぶって。一緒にいると楽しくて目が離せなくなる。今までずっとそばにいた蘭と、これからも一緒に生きていきたい。大人の女性へと成長する蘭を、誰よりも近くで守っていきたい。だから蘭。誰かに告白されても断って。私には将来を約束したフィアンセがいるからって」
「…フィアンセって、誰のこと?」
「もちろん、俺」
私はパチパチと瞬きした後、思わず吹き出して笑い出す。
「何それ?新手の催眠術?」
「なんだと?立派な告白だ!」
「だって、俺というフィアンセがいるから告白を断れ、だなんて。私、そんなので洗脳されないからね?」
むーっ!と尊は不機嫌になる。
「じゃあ、そいつの告白にイエスって答えるの?俺じゃなく、そいつとつき合うの?」
焦ったように問い詰めてくる尊に、私はちょっと考え込む。
人を好きになるって、どういう時だろう?
私には好きな人がいるのかな?
もう一度視線を上げると、尊が心配そうに私を見つめていた。
「蘭…」
切なそうに私の名前を呼ぶ。
「ずっと会いたかった。この2か月、会いたくて触れたくてたまらなかった。やっと会えたのに、蘭は別の男のところに行くって言うのか?そんなの…」
尊は感情をぶつけるように私をぎゅっと抱きしめた。
「蘭、俺がどんなに蘭を好きか…。まだ15才だからって、今まで押しとどめてきた気持ちを全部ぶつけたい」
そう言って少し身体を離すと、愛おしそうに私の頬を右手でなでる。
やがて尊はゆっくりと目を閉じると、顔を寄せてそっと私の左の頬にキスをした。
「蘭、心から好きだ。誰よりも大切な人だよ」
耳元で甘くささやかれ、私の胸はキュッと締めつけられた。
こんな尊、知らない。
尊のこんな想いも知らなかった。
だけど、今まで尊がどんな時もそばで私を守ってくれていたことは知ってる。
いつも笑って私を励ましてくれたことも。
ピンチの時には、いつだって駆けつけて助けてくれたことも。
そう、どんな時も尊は優しく私を見つめてくれていたんだ。
私は両手を尊の背中に回して、ぎゅっと抱きついた。
心の中がじんわりと温かくなり、切なさに涙がこみ上げてくる。
「尊…」
思わず呟くと、尊はたまらないというように何かをこらえる表情で私を見つめた。
「蘭、愛してる」
そう告げられた瞬間、私の心はしびれたように切なく傷んだ。
思わず涙がこぼれ落ちる。
尊は親指で優しく私の涙を拭うと、両手で頬を包み込む。
切なさと愛おしさにあふれた尊の瞳に見つめられ、私はそっと目を閉じた。
尊は顔を傾けながら私に寄せ、少しためらってから、そっと唇にキスをする。
ぎこちなく、ほんの少しかすめただけの口づけは、まるで今の私達の気持ちそのもの。
互いの気持ちを確かめ合い、少しずつ触れ合っていく。
「蘭、先輩の告白、断ってくれる?」
「うん。大切な人がいるからって、断る」
「ありがとう」
そう言って私を抱きしめると、尊はジーンズのポケットから小さなケースを取り出した。
「蘭、これ。イギリスのお土産なんだ。開けてみて」
私は尊から群青色のケースを受け取ると、そっと開けて中を見る。
「わあ、綺麗…」
入っていたのは、パールが3つ並んだネックレス。
リボンのような形だけど、よく見ると…?
「ひょっとしてこれ、すずらん?」
「そう。イギリスでも、すずらんは幸運の花として大切にされてるんだ。蘭に似合うと思って」
そう言って尊は、ネックレスを私の首に着けてくれる。
「うん、よく似合ってる」
私は手でそっと触れてみた。
可愛らしいすずらんが、胸元で咲いている。
「尊、ありがとう!」
思わず私は尊の首に腕を回して抱きつく。
尊は一瞬驚いてから、フッと笑顔になって優しく抱きしめてくれた。
「良かった、こんなに喜んでくれて」
「うん、すごく嬉しい!私ね、尊がすずらんを選んでくれたことが嬉しいの。蘭じゃなくて、すずらん。私はすずらんなの」
私の意味不明な言葉を、尊は理解してくれたようだ。
うん、と頷いて頭をなでてくれる。
「大切にするね。一生の宝物」
「ああ。離れていても、俺はいつだって蘭を守っているから」
「うん!…あのね、尊」
「何?」
「私、尊のことが大好き」
尊は目を見開いてから、とびきり幸せそうに笑う。
私達はもう一度顔を寄せ合い、幸せを噛み締めながらゆっくりとキスをした。
私はハッと息を呑む。
尊はゆっくりと言葉を続けた。
「生まれた時からそばにいて、ずっと一緒に大きくなって、あまりに近かったから、改めて言葉にしてこなかった。だけど俺はいつだって蘭のことを想っている」
「…尊」
「さっき父さんにこっぴどく叱られたよ。言葉で伝えることの大切さ、一緒にいられることのありがたさを何も分かってない!って。確かにそうだよな。俺は勝手に、蘭にも俺の気持ちが伝わってると思い込んでた。蘭はまだ15才だから、つき合ってデートしてって話は、もう少し先だろうと思ってたんだ。だけど心は繋がってるって、うぬぼれてた。まさか他の男が蘭に告白するなんて、考えてもみなくて。父さんに怒られたよ。蘭なら言い寄って来る男はたくさんいるって。そうだよな、高校生だもんな。普通に恋愛したっておかしくない」
うつむき加減でひとり言のように話してから、尊はもう一度正面から私を見据えた。
「蘭、改めて俺の気持ちを伝える。俺は蘭が好きだ。明るくて可愛くて、時々おせっかいでちょっと大人ぶって。一緒にいると楽しくて目が離せなくなる。今までずっとそばにいた蘭と、これからも一緒に生きていきたい。大人の女性へと成長する蘭を、誰よりも近くで守っていきたい。だから蘭。誰かに告白されても断って。私には将来を約束したフィアンセがいるからって」
「…フィアンセって、誰のこと?」
「もちろん、俺」
私はパチパチと瞬きした後、思わず吹き出して笑い出す。
「何それ?新手の催眠術?」
「なんだと?立派な告白だ!」
「だって、俺というフィアンセがいるから告白を断れ、だなんて。私、そんなので洗脳されないからね?」
むーっ!と尊は不機嫌になる。
「じゃあ、そいつの告白にイエスって答えるの?俺じゃなく、そいつとつき合うの?」
焦ったように問い詰めてくる尊に、私はちょっと考え込む。
人を好きになるって、どういう時だろう?
私には好きな人がいるのかな?
もう一度視線を上げると、尊が心配そうに私を見つめていた。
「蘭…」
切なそうに私の名前を呼ぶ。
「ずっと会いたかった。この2か月、会いたくて触れたくてたまらなかった。やっと会えたのに、蘭は別の男のところに行くって言うのか?そんなの…」
尊は感情をぶつけるように私をぎゅっと抱きしめた。
「蘭、俺がどんなに蘭を好きか…。まだ15才だからって、今まで押しとどめてきた気持ちを全部ぶつけたい」
そう言って少し身体を離すと、愛おしそうに私の頬を右手でなでる。
やがて尊はゆっくりと目を閉じると、顔を寄せてそっと私の左の頬にキスをした。
「蘭、心から好きだ。誰よりも大切な人だよ」
耳元で甘くささやかれ、私の胸はキュッと締めつけられた。
こんな尊、知らない。
尊のこんな想いも知らなかった。
だけど、今まで尊がどんな時もそばで私を守ってくれていたことは知ってる。
いつも笑って私を励ましてくれたことも。
ピンチの時には、いつだって駆けつけて助けてくれたことも。
そう、どんな時も尊は優しく私を見つめてくれていたんだ。
私は両手を尊の背中に回して、ぎゅっと抱きついた。
心の中がじんわりと温かくなり、切なさに涙がこみ上げてくる。
「尊…」
思わず呟くと、尊はたまらないというように何かをこらえる表情で私を見つめた。
「蘭、愛してる」
そう告げられた瞬間、私の心はしびれたように切なく傷んだ。
思わず涙がこぼれ落ちる。
尊は親指で優しく私の涙を拭うと、両手で頬を包み込む。
切なさと愛おしさにあふれた尊の瞳に見つめられ、私はそっと目を閉じた。
尊は顔を傾けながら私に寄せ、少しためらってから、そっと唇にキスをする。
ぎこちなく、ほんの少しかすめただけの口づけは、まるで今の私達の気持ちそのもの。
互いの気持ちを確かめ合い、少しずつ触れ合っていく。
「蘭、先輩の告白、断ってくれる?」
「うん。大切な人がいるからって、断る」
「ありがとう」
そう言って私を抱きしめると、尊はジーンズのポケットから小さなケースを取り出した。
「蘭、これ。イギリスのお土産なんだ。開けてみて」
私は尊から群青色のケースを受け取ると、そっと開けて中を見る。
「わあ、綺麗…」
入っていたのは、パールが3つ並んだネックレス。
リボンのような形だけど、よく見ると…?
「ひょっとしてこれ、すずらん?」
「そう。イギリスでも、すずらんは幸運の花として大切にされてるんだ。蘭に似合うと思って」
そう言って尊は、ネックレスを私の首に着けてくれる。
「うん、よく似合ってる」
私は手でそっと触れてみた。
可愛らしいすずらんが、胸元で咲いている。
「尊、ありがとう!」
思わず私は尊の首に腕を回して抱きつく。
尊は一瞬驚いてから、フッと笑顔になって優しく抱きしめてくれた。
「良かった、こんなに喜んでくれて」
「うん、すごく嬉しい!私ね、尊がすずらんを選んでくれたことが嬉しいの。蘭じゃなくて、すずらん。私はすずらんなの」
私の意味不明な言葉を、尊は理解してくれたようだ。
うん、と頷いて頭をなでてくれる。
「大切にするね。一生の宝物」
「ああ。離れていても、俺はいつだって蘭を守っているから」
「うん!…あのね、尊」
「何?」
「私、尊のことが大好き」
尊は目を見開いてから、とびきり幸せそうに笑う。
私達はもう一度顔を寄せ合い、幸せを噛み締めながらゆっくりとキスをした。