すずらんを添えて 幸せを
「着いたー!」

「はあ、疲れたー」

川にたどり着くと、バンザイをする私とは対照的に、お姉ちゃんはぐったりと座り込む。

綺麗な川のほとりには、たくさんのすずらん。

年々花が増えて、今では見渡す限り一面にすずらんが咲き誇っていた。

私とお姉ちゃんは、川の水を両手ですくって口に運ぶ。

冷たくて美味しい水が身体に染み渡るのを感じてから、両手を組んで目を閉じ、藤さんに語りかけた。

「藤さん、こんにちは。お元気ですか?今年も二人で会いに来ました」

サーッと心地良い風が吹き、私の心の中で声がする。

『こんにちは。まあ、二人ともますます綺麗になったわね』

「藤さん、私達、フラワーショップを開いたの。お店の名前はミュゲ。フランス語ですずらんって意味なの」

『あら、素敵ね。すずらんは幸せを運ぶ花だもの。あなた達の手でたくさんの人に幸せを届けてね』

「ありがとう!それから私、もうすぐ結婚するの」

『えっ、そうなの?おめでとう!じゃあ来年は、可愛い赤ちゃんも一緒かしら?』

「そ、それはさすがに無理よ」

『ふふふ。いつか連れて来てくれるのを、楽しみにしてるわね』

「ええ」

私とお姉ちゃんは微笑んで、また来るね!と藤さんに挨拶した。
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