すずらんを添えて 幸せを
全てを話し終えると、私は顔を上げて尊を見据えた。

「だから私、自分の目ではっきり確かめたい。お母さんが見た川を探し出して、神様にお願いしてみる。お姉ちゃんを奪わないでって」

こんな話、尊は信じてくれないだろうか。

そう思いながらじっと見つめていると、やがて尊は、分かったと頷いた。

そしてスマートフォンを取り出して、何やら検索を始める。

「蘭、富士山には幻の川と滝が存在する」

「え!ほんと?」

「ああ。スコリア質の土壌ではなく、表面が岩盤状になっている場所がある。そこに水が流れるんだ。けど、日によって場所や姿が変わったりするし、1年のうちで1か月しか見られない」

「だから幻?」

「そうだろうな。蘭、おばさんが見た川は現実に存在する。おばさんは、確かに富士山の川の水を飲んだんだ」

尊は目に強い力を込めてきっぱりと言う。

「行こう、蘭。必ずその川を見つけ出してみせる」

うん、と私も大きく頷いた。
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