【女の事件】黒いマタニティドレス
第1話
時は1999年5月5日頃であった。

場所は、山口県柳井市本橋通《やないしもとはしとお》りにある豪華ホテルにて…

この日は、こうじ(18歳・無職)の父親の知人夫婦の息子さんの挙式披露宴がとり行われていた。

こうじの家族4人(両親と36歳の姉とこうじ)は、挙式披露宴に出席するためにホテルにやって来た。

家族4人がホテルに到着した時だった。

エントランスホールのカフェテリアに両家の親族のみなさまが集まっていた。

出席者たちは、結婚披露宴が始まるまでの間のひとときを過ごしていた。

みなさまがお茶をのみながら楽しく過ごしている中で、こうじの一家も加わった。

一家4人がソファに座ったあと、コーヒーとケーキのセットを頼んだ。

そんな時であった。

こうじの家の近くにある公営団地《だんち》で暮らしているかよこ(24歳・以後表記はかよこ)とひろむ(27歳・工場勤務・以後表記ひろむ)夫婦が生後7ヶ月の長女を連れてカフェテリアにやって来た。

一家3人は、こうじの一家4人の元へやって来た。

かよことひろむは、光市の市役所が主催の出会いイベントで知り合った。

数ヶ月のお付き合いをへて結婚した。

挙式披露宴のバイシャク人は、こうじの両親が務めた。

おふたりは、結婚してすぐに実家を出た。

その後、こうじが暮らしている家の近くにある公営団地《だんち》に移り住んだ。

おふたりは、幸せイッパイですべて順調であった。

おふたりは、こうじの両親と楽しく話をしていた。

こうじの両親は、おふたりの生後7ヶ月の長女がかわいいかわいいと言うてえこひいきしまくった。

こうじと姉のひさこは、ものすぐネクラな表情を浮かべていた。

こうじは、光市内にある一戸建ての家で両親と姉ひさことこうじの4人で暮らしている。

こうじは、上に11歳年上の兄(29歳・市役所勤務)がいるが結婚を機に家から出た。

こうじの兄は、妻(42歳)とふたりの子供(長男1歳)と妻の連れ子(女の子・5歳〜妻をレイプした元カレの子である)と一緒に光市内《しない》にある別の場所で暮らしていた。

こうじの兄は、実家が大キライなので親きょうだいたちと一緒に暮らす意思は全くない…

こうじは昭和56年に山口県光市の生まれであるが、ひさこと兄とは母親が違う。

こうじの実の母親は、広島市的場町のナイトクラブで働いていた中国人ホステスの女であった。

こうじの父親がホステスの女を私物化した上に妊娠騒ぎを起こした。

その事件が原因で、ひさこの人生が大きく狂った。

当時、ひさこは大学受験を控えていた。

同時に、兄も難易度の高いラサール(進学校)の中等部の受験を控えていた。

ふたりが真剣モードになっている時に、父親が深刻なあやまちを犯した。

事の次第を聞いたナイトクラブの店長が激怒した。

激怒した店長は、知人のヤクザの男たち10人を連れて家に押しかけた。

店長の知人のヤクザの組長は、こうじの母親に対して『オドレのテイシュが犯したあやまちは、ニョウボウであるオドレがつぐなうんだよ!!』と怒鳴りつけた。

こうじの母親は、父親が起こしたあやまちをつぐなうために子どもたちの学資保険を全部解約した。

受け取った解約金を全部ヤクザに渡した…

父親のせいで大学受験をあきらめたひさこは、20単位を残した状態で高校《ガッコー》をやめた。

その後、ひさこは広島市内にあるお好み焼き屋さんで働き始めた。

しかし、途中でリタイアした。

光市と広島の間を山陽本線《さんようせん》の電車に乗って往復する日々だけ…の暮らしが苦痛になった…

お好み焼き屋の主人から『なんでコーコーをやめたのかな…』とばかり言われた…

『楽しい時間を過ごすためにコーコーに行くのだよ…』
『コーコーに行ったら、お友だちがたくさんいるのに…』
『夏休み冬休み春休みがないのはイヤだと思わないのか?』
『うちのオイゴは、修学旅行で韓国へ行くのが楽しみだと言うてたよ…』

お好み焼き屋の主人から小うるさく言われたひさこは、働くことをやめて結婚することを選んだ。

両親からのすすめでお見合いをしたが、断られてばかりいた。

こうじの両親は、ひさこの結婚相手の条件を年収が1000万円以上・有名大学卒業・職業は医師か弁護士か大学の教授か政府機関の職員か政治家の家のオンゾウシ・ムコヨウシ希望と設定してお見合いを申し込んだ。

しかし、こうじの両親が求めている条件のお相手はひとりもいなかった。

仕方がないので、お相手の条件をより低く設定した。

年収が低くても、お嫁さんを養うことができたらいい…

そう思って、お相手を探し直したが大失敗した。

ひさこは、両親のせいで結婚をあきらめた。

ラサールの受験をあきらめたこうじの兄は、光市内《しない》の公立中学校に進学した。

中卒後に実家《いえ》を出た後、広島市内にある白衣の卸し問屋で丁椎《でっち》どんになった。

その間に、高校に行けるチャンスがたくさんあった。

しかし、こうじの兄は勉強できないことを理由に周囲の人たちの提案をけった。

こうじの兄が18歳の時だった。

父親が友人のクレジットの保証人になったと同時に父親の勤務先の工場が閉鎖された…

母親からの知らせを聞いたこうじの兄は、光市へ引き返すことになった。

この時、こうじの兄は高校卒業の資格がないことと運転免許証などの資格がなかったので大パニックを起こした。

こうじの兄は、一旦実家へ帰ったあと陸上自衛隊《りくじ》に入隊した。

通信制高校に通いながら自衛隊で働いた…

通信制高校を卒業したと同時に除隊した…

運転免許証や国家資格は取得しなかった…

除隊したあと、すぐに実家に帰った…

そして、母親の知人夫婦のコネで市役所に就職した。

こうじの兄は、市役所に就職してから1年後に職場の人の紹介で13歳年上の妻とお見合いした。

そして、数日で結婚した。

しかし、両親は激しく反発した。

元カレの子どもがいる…

元カレと仲間の男たちからレイプの被害を受けた…

子どもの父親は、集団レイプの加害者の男である…

こうじの兄は、周囲の猛反対を押し切って妻と結婚した。

それから1年後に長男が誕生した。

こうじの兄は、幸せいっぱいの結婚生活を送っている…

その一方で、実家が大パニックにおちいった…

ひさこは、結婚を完全にあきらめた…

こうじがガッコーに行かなくなった…

高校卒業の資格を取ってほしい…

高校卒業の資格がないと困ることがたくさんあるよとこうじに伝えているのに、こうじが言うことを聞かない…

こうじの両親はこうじに対して一方的に要求をつきつけた…

その結果、こうじの心が大きく壊れた…

そして、1999年7月末…

恐ろしい悲劇の幕があがった。
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