【女の事件】黒いマタニティドレス
第11話
時は、2000年7月2日の明け方であった。

逃走中のこうじは、徳島県阿南市でケーサツに逮捕された。

その後、市内にある警察署に連行された。

こうじが取り調べ中に奇声をあげながら暴れまわったので、ケーサツは取り調べを取りやめた。

その後、こうじは精神鑑定《かんてい》を受けるために徳島市にある拘置所へ送られた。

こうじは、約一ヶ月にわたって精神鑑定《かんてい》を受けた。

その結果、こうじは重度のシンシンソウシツ状態で刑事責任能力なしと判断された。

こうじは、母親の知人夫婦と一緒に警察署から出た。

処分保留でシャクホウされたこうじは、帰る家がない…

家族がいない…

高校中退で無資格無特技…

こんな状態で生きろと言われても無理だ…

処分保留でシャクホウされたこうじは、母親の知人夫婦の家で暮らすことになった。

こうじは、2000年8月10日に知人夫婦からの紹介で今治市内にあるタオル工場に再就職した。

与えられたお仕事は、段ボール箱を作る作業だけであった。

こうじは、与えられたお仕事をもくもくとこなしていた。

しかし、心のどこかで負い目を感じていた。

決められた時間に与えられたお仕事をする…

お昼は、給与引きで注文したお弁当を食べる…

仕事が終わったあとは、まっすぐに家に帰る…

こんな暮らしのどこがいいのだ…

こうじは、パターン化された暮らしを送ることに対してより強い不満を抱いた。

最初の1ヶ月半は『自分の気持ちがだるいから高校中退になったのだ!!』と割り切ってガマンを押し通した。

しかし、2000年10月頃にこうじはガマンの限度を超えたようだ。

2000年10月9日の夜遅くだった。

場所は、今治市共栄町《しないきょうえいちょう》にある酒場街にて…

こうじは、酔っぱらいの男性のグループ同士による乱闘騒ぎを目撃した。

思い切りブチ切れたこうじは、刃渡りの鋭いナイフで酔っぱらいのグループの男性たちを次々と斬《き》りつけて殺した。

こうじは、再び殺人罪でケーサツに逮捕された。

このときもこうじは、取り調べ中に奇声をあげながら暴れまわった。

その後、鑑定簡易《かんてい》を受けた。

その結果、心身耗弱に近い状態と判断されたが刑事責任が問えるかどうかについては『わからない』と判断された。

松山地検《ちけん》は、刑事責任能力の有無に関係なくこうじを殺人罪で起訴した。

それから一ヶ月後にひらかれた裁判でこうじは懲役10年の刑を言い渡された。

その後、こうじは広島刑務所へ送られた。

こうじは、2001年の年明けと同時に広島刑務所で服役生活を始めた。

シュウカンされてから2週間後にこうじが暮らす部屋が決まった。

この時、こうじは同じ部屋で暮らしている受刑囚の男3人とドカバキの大ゲンカをくり広げた。

乱闘騒ぎを起したこうじは、鎮静房へ収容された。

鎮静房に収容されたこうじは、キンシン中も態度が悪かった。

昼間もいびきを書いて寝ていた…

起きていても、受刑者たちの悪口をボロクソに言うなど…ボーゲンをはきまくった。

この時、刑務所のえらいさんたちはソートー怒りまくっていた。

えらいさんたちは、こうじを北海道道北《さいはて》にある収容所同然の刑務所へ移送したらどうかと口々に言い出した。

しかし、現地の刑務所の定員がいっぱいなので移送は見送られた。

このため、こうじは広島刑務所にとどまることになった。

時は流れて…

9月はじめ頃であった。

こうじは、まだ鎮静房で暮らしていた。

こうじは、看守たちに対して『鎮静房《ここ》の暮らしの方がここちいい…雑居房《あそこ》はうざいからイヤだ…オレは鎮静房《ここ》に一生いるからな…へへへ…』と言うたあとおしりペンペンと叩くなどしてチョーハツした。

刑務所のえらいさんたちのガマンの限度が来た…

法務省は、こうじを根室にあるB刑務所へ移送させることを決めた。

B刑務所は、更生できない受刑者たちのついのすみかであった。

そこは住環境が激悪で、部屋のあちらこちらにカビが生えるなどフケツだった。

こうじは、看守のひとりから『オドレは9月12日を持って、根室のB刑務所へ移動だ…劣悪な環境で暮らすことになったので覚悟しておくように…』と伝えられた。

それを聞いたこうじは、大パニックを起こした。

そして、2001年9月11日の夜10時過ぎであった。

この時、アメリカ同時多発テロ事件が発生したニュースがテレビラジオで伝えられた時間帯であった。

そんな中で、恐ろしい事件が発生した。

(ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!)

恐ろしいブザー音が刑務所の敷地内に響き渡った。

同時に、ドーベルマンを連れた刑務所の職員たち全員が脱獄した受刑囚の捜索を始めた。

「秋月が脱獄したぞ!!探せ!!」

敷地内には、恐ろしいブザー男とドーベルマンの吠える声が響いた。

頭がサクラン状態におちいったこうじは、無我夢中で敷地内を走り回った。

こうじは、塀《へい》に設置されていた工事用の足場の階段を昇った。

「秋月がいたぞ!!」
「撃て!!撃て!!」

こうじを見つけた職員のひとりが持っていたけん銃を取り出した。

(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)

職員は、こうじに向けてイカク発砲した。

こうじは、足場の階段を通って刑務所から脱獄した。

それから2分後であった。

(キーッ!!バタン!!ドカドカ!!)

刑務所から700メートル先の路地に黒のトヨタエスティマが止まった。

車内からやくざの男たち10人が飛び出た。

やくざの男たち10人は、こうじをはがいじめにしたあと無理やり車に乗せた。

(キキキキキキキキキキキキキキキ!!グォーン!!)

その後、車は現場から逃走した。

やくざの男たちにラチされたこうじは、千代田(北広島町)にある廃墟の倉庫に監禁された。

こうじを連れ去ったやくざの男たち10人は、かよこのかつての愛人だった組長《おやぶん》が取り仕切っている組織《くみ》の連中だった。

男たち10人は、組長《おやぶん》が大好きだった女《レコ》を殺されたホウフクでこうじをラチした。

こうじは、それから6年前後に渡って倉庫に監禁された。

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