隣の席の徳大寺さん
第10話
 隣の席の徳大寺さんは、少し変わっている。

 持ち物は女の子らしいものが多いのに、何故かスマホケースは少しごつくて頑丈そうな物だ。

「そのスマホケース、すごく丈夫だよね」
「そうね。高さ1.2m、26方向の落下試験をクリアした、選ばれし強者(ツワモノ)よ」

 少し前まで、徳大寺さんはスマホにケースをつけていなかった。
 新しい機種にしたわけでもないのに、なぜ急にケースをつけたのか尋ねてみた。

「えっと……大切なものだから、ちゃんと守らなきゃって思って……壊したくないし」
「そっか。名前はなんていうの?」
「このスマホケース?」
「そう。名前、つけたんでしょ?」
「う、うん……。あの、こ、これはね……朱莉(アカリ)っていうの……」

 それは確か、徳大寺さんの名前。 そしてスマホには、僕の名前がついている。

「ケースとスマホって、いつも一緒だから……って思って……」

 やっぱり、隣の席の徳大寺さんは、少し変わっている。
 でも、とても素直で可愛い人だと、僕は思う。
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