エリート弁護士は生真面目秘書を溺愛して離さない
1 運命の変わる誕生日
その日、運命の変わる六月一日、小鳥遊由依は大変浮かれていた。
「小鳥遊先輩、お誕生日おめでとうございます!」
後輩の須藤葵が誕生日プレゼントを渡してくれたのは、勤め先である鞘白弁護士事務所の秘書室で帰り支度をしているときのこと。由依は綺麗にラッピングされた包みを受け取って、にっこり笑った。
「ありがとう、葵ちゃん。すごく嬉しい。開けてもいい?」
「どうぞどうぞ!」
嬉しげな葵に促されてみれば、中身はバスソルトだった。ガラス瓶入りのお高めのやつだ。
「敏腕秘書の先輩には、少しでもリラックスしてもらいたくって! 今日はこの後、彼氏さんとデートなんですよね。今日の先輩めっちゃ綺麗ですもんね〜、いつも綺麗ですけど! 仕事もできるし優しいし、まさにパーフェクトな高嶺の花って感じです」
「そんなことないよ……」
苦笑しながら、秘書室の壁際に置かれた姿見をちらりと見る。社交辞令とはわかっているものの、いつもはアップにしている髪を巻いて、花柄の上品なワンピースを着た姿は我ながらいい感じだ。
——二十八歳の誕生日、彼氏から「大事な話がある」と言われた身としては、全然悪くない。
思わず口元が緩んでしまう由依に「あ、でも」と葵が心配そうに言う。
「帰る前に、鞘白先生に定時上がりって伝えた方がいいんじゃないですか」
「小鳥遊先輩、お誕生日おめでとうございます!」
後輩の須藤葵が誕生日プレゼントを渡してくれたのは、勤め先である鞘白弁護士事務所の秘書室で帰り支度をしているときのこと。由依は綺麗にラッピングされた包みを受け取って、にっこり笑った。
「ありがとう、葵ちゃん。すごく嬉しい。開けてもいい?」
「どうぞどうぞ!」
嬉しげな葵に促されてみれば、中身はバスソルトだった。ガラス瓶入りのお高めのやつだ。
「敏腕秘書の先輩には、少しでもリラックスしてもらいたくって! 今日はこの後、彼氏さんとデートなんですよね。今日の先輩めっちゃ綺麗ですもんね〜、いつも綺麗ですけど! 仕事もできるし優しいし、まさにパーフェクトな高嶺の花って感じです」
「そんなことないよ……」
苦笑しながら、秘書室の壁際に置かれた姿見をちらりと見る。社交辞令とはわかっているものの、いつもはアップにしている髪を巻いて、花柄の上品なワンピースを着た姿は我ながらいい感じだ。
——二十八歳の誕生日、彼氏から「大事な話がある」と言われた身としては、全然悪くない。
思わず口元が緩んでしまう由依に「あ、でも」と葵が心配そうに言う。
「帰る前に、鞘白先生に定時上がりって伝えた方がいいんじゃないですか」
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