エリート弁護士は生真面目秘書を溺愛して離さない
(しっかり者と思っていた秘書がこんな趣味と知ったら、流石にドン引きでしょう!)

 職場では澄まし顔でいるくせに、実は可愛いマスコットが大好きですなどと上司に白状するのはかなり恥ずかしいが、これで鞘白が冷静になってくれればいい。一人でも大丈夫そうだから好かれて、同じ理由で捨てられるのはもう懲り懲りだ。

 鞘白は不可解そうに眉をひそめ、生真面目にPCで調べ始めた。それから合点したように「ああ」と呟く。

「小鳥遊の気に入りのやつか。街でこのうさぎを見かけるといつも目で追っていたから、好きなんだろうなと思っていた」
「えっ!?」

 思わぬ指摘にぎょっとして一歩後ずさる。「私、見てました? いつ?」

「いつということもないが……例えば十日前、駅の構内にこのイベントのポスターが貼ってあっただろう。通り過ぎるときに横目で眺めていたじゃないか」

 冷静に説明され、カーッと頬が熱を持つ。完璧に隠し通していたつもりだったのに、こんな簡単に見透かされていたなんて。しかも事細かに覚えているらしい。なんという記憶力。

「……さ、さすが先生は、人をよく見ていらっしゃいますね……」

 震え声の由依に、鞘白がデスクに落ちた手帳を拾いながら答えた。

「別に、誰彼構わず観察しているわけじゃないからな。小鳥遊だから、だ」
「えっ?」
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