エリート弁護士は生真面目秘書を溺愛して離さない
壱成の後ろで由依がおずおずと顔を上げた。ちらりと振り返ると、大きな瞳いっぱいに涙を溜めた由依が、驚いたように口を開けていた。
『な……っ』
『まあまあ、落ち着いてください』
気色ばむ母親を取りなすように、武雄が穏やかに言う。『確かに一理ある。写真だけでも慰謝料を獲得できるよう全力を尽くしますよ』
そして壱成に顔を向け『お前はお嬢さんを休ませてやれ。こちらは具体的な話を進めておくから』と退室を指示する。壱成は由依の腕を掴んで立ち上がらせ、ひとまず休憩室に連れていった。その途中、由依はとうとう『……ひっく』としゃくりあげたかと思うと、ぼろぼろと大粒の涙をこぼし始めた。
泣いている女の子の慰め方なんて知らない。壱成はとにかく由依をソファに座らせ、自販機でフルーツジュースを買って渡してやった。由依は大人しくボトルを受け取って、縋るように胸に抱きこんだ。
二人の他に誰もいない休憩室に、由依のすすり泣きだけが響き渡る。弱り果てた壱成が壁にもたれて腕を組んでいると、ぽつりと小さな声が聞こえてきた。
『……お母さんとお父さん、離婚すると思いますか』
由依だった。まだ涙に濡れた顔を持ち上げて、壱成を見つめてくる。赤くなった目元が痛々しく、壱成は知らず壁から背を離していた。
『少なくとも、御母堂はそのつもりのようだ』
『な……っ』
『まあまあ、落ち着いてください』
気色ばむ母親を取りなすように、武雄が穏やかに言う。『確かに一理ある。写真だけでも慰謝料を獲得できるよう全力を尽くしますよ』
そして壱成に顔を向け『お前はお嬢さんを休ませてやれ。こちらは具体的な話を進めておくから』と退室を指示する。壱成は由依の腕を掴んで立ち上がらせ、ひとまず休憩室に連れていった。その途中、由依はとうとう『……ひっく』としゃくりあげたかと思うと、ぼろぼろと大粒の涙をこぼし始めた。
泣いている女の子の慰め方なんて知らない。壱成はとにかく由依をソファに座らせ、自販機でフルーツジュースを買って渡してやった。由依は大人しくボトルを受け取って、縋るように胸に抱きこんだ。
二人の他に誰もいない休憩室に、由依のすすり泣きだけが響き渡る。弱り果てた壱成が壁にもたれて腕を組んでいると、ぽつりと小さな声が聞こえてきた。
『……お母さんとお父さん、離婚すると思いますか』
由依だった。まだ涙に濡れた顔を持ち上げて、壱成を見つめてくる。赤くなった目元が痛々しく、壱成は知らず壁から背を離していた。
『少なくとも、御母堂はそのつもりのようだ』