エリート弁護士は生真面目秘書を溺愛して離さない
 理知の宿る鋭い瞳にすっと通った鼻筋。綺麗に整えられた黒髪には一筋の乱れもなく、気負うことなく高級スーツを着こなしている。整った顔立ちだけでなく、内から滲み出る知性やら自信やらがそうさせるのだろう。

「小鳥遊、どうした?」

 鞘白がPCから顔を上げて由依を見つめる。由依はハッと我に返り「すみません、夕陽が眩しくて」とごまかす裏で、素早く頭にタスクリストを呼び出した。

「本日、私は定時で上がらせていただきます。この後先生は打ち合わせの予定はありません。先ほど届いた訴状はスキャンして共有フォルダに格納済み、お探しの判例は判例雑誌で見つけて付箋をつけておきました。あと法務局で登記も取得済みで——」

 てきぱき並べ立てると鞘白は軽く頷く。由依が専属である理由はこれだった。彼はとにかく優秀すぎるので秘書のやるべく仕事も多く、他の弁護士まで担当する余裕がないのだ。由依の前はかなりのベテランが担当していたらしく、由依は今でも毎日フル回転しないと追いつかない。

 鞘白は机上のコーヒーカップに手を伸ばし、一口飲んで言った。

「そこまでやってもらえれば申し分ない。……何だ、その荷物は」

 由依の抱える包みに訝しげな目が向けられる。仕事以外のことを聞かれるとは思わず、由依はどぎまぎしながら答えた。

「須藤さんからの誕生日プレゼントです。実は今日、私の誕生日で」
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