エリート弁護士は生真面目秘書を溺愛して離さない
「はい。私ばっかり知ってもらうのって、不公平です。私も壱成さんのことを知って、何かお返しがしたい……」
意を決して目を開ければ、壱成が「苦手なことか……」と思案顔で低く呟いていた。
「朝は苦手だな」
「そうだったんですか?」
由依は思わず壱成を見上げる。事務所で見る彼はいつでも凛としていて、仮眠を取った後もシャンとしているのに。
「ああ、低血圧でな。ベッドで一時間くらいぼんやりしているし、その後シャワーを浴びてようやく目が覚める」
苦々しげな口ぶりの壱成に、由依の唇から久しぶりに明るい笑い声が弾けた。
「ふふっ、そんなに弱っている壱成さんなんて想像もできませんね。どんな感じなのか見てみたいです」
くすくす肩を揺らしていると、壱成が「ほう?」と低く呟く。缶コーヒーを傍らに置き、からかうような笑みを目元に滲ませた。
「見たいって……誘っているのか?」
「え?」
壱成は由依のほつれた髪を長い指で梳いたかと思うと、蠱惑的な声で囁いた。
「ご所望なら、俺は今夜でも構わないが」
言葉の裏に秘された色香に、由依はぎょっと飛び退いた。
「ちっ、ちが、そういう……そういういやらしい意味ではなく! 健全な意味で!」
あわあわと両手を振り回す。健全ってどういうことだ。