エリート弁護士は生真面目秘書を溺愛して離さない


 初めて訪れたグッズ売り場は盛況で、由依は夢見心地でぐるりを見渡した。

「どこを向いてもしろうさたんと目が合う……天国……?」

 由依の奇行に慣れたのか、壱成は棚に並んだグッズを眺めて「どれを買うんだ?」としらっとしている。

「ど、どれにしよ……あっ」

 声を弾ませた由依の視線を追い、壱成が軽く頷いた。

「ぬいぐるみか。いいじゃないか」

 両手に抱えるくらいの大きさのぬいぐるみだった。由依は棚にふらふらと近づき、つぶらな瞳でこちらを見つめるしろうさたんを凝視し「で、でも、ちょっとお高めですしね〜……」と呻吟する。

(というか、割と大人のお客さんもいるのね)

 こっそり周囲を見回せば、グッズを買い求める人々は様々だった。家族づれもいるが、一人参戦のファンもいる。由依がぬいぐるみを前に頭を抱えていても、奇異の目を向けてくる者はいない。それだけ幅広い人にしろうさたんは愛されているのだと思うと、ほっこりと心が和んだ。

(まあ、壱成さんは死ぬほど目立っているけれど!)
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