エリート弁護士は生真面目秘書を溺愛して離さない
5 帰したくない
グッズ売り場を出る頃には、日は暮れて空は深い藍色に染まっていた。丸い月が夜空を照らし、真珠みたいな星が青白い光を放っている。
星彩を遠く仰ぎながら、由依は大きく息をつく。グッズ売り場の入り口近くで、仕事の電話が来てしまった壱成を待っているところだった。しろうさたんは抱えていない。壱成が「重いだろ」と持ってくれたままだからだ。
ふと思いついてバッグからスマホを出す。今日は楽しすぎて、スマホを見るのをすっかり忘れていた。何か重要な連絡が来ているかもしれないと確認して——指先が凍りつく。
「えっ、稔……?」
何十件もの着信と、百を超えるメッセージ。由依は反射的に周囲に頭を巡らせる。壱成の姿は見当たらない。もう少し離れたところで電話しているのだろう。
メッセージは『話がしたい』『電話に出てくれ』『由依、頼む』と具体的な内容は何もない。それだけに、何か緊急事態が起きたのではないかと背中に汗が浮かんだ。
(もしかして愛衣に何か起きたとか……?)
彼女は妊娠していると言っていた。何が起きてもおかしくない。
震える指で電話帳を呼び出し、稔の番号を押す。電話はすぐにつながった。
「もしもし?」
『由依か!?』
急き込んだ稔の声が聞こえる。由依はスマホから耳を少し離し、できるだけ落ち着いた口調で問いかけた。
「そうだけど、愛衣に何かあったの?」
『ああ、愛衣なんだよ! あいつ信じられねえよ!』
「……はあ?」
星彩を遠く仰ぎながら、由依は大きく息をつく。グッズ売り場の入り口近くで、仕事の電話が来てしまった壱成を待っているところだった。しろうさたんは抱えていない。壱成が「重いだろ」と持ってくれたままだからだ。
ふと思いついてバッグからスマホを出す。今日は楽しすぎて、スマホを見るのをすっかり忘れていた。何か重要な連絡が来ているかもしれないと確認して——指先が凍りつく。
「えっ、稔……?」
何十件もの着信と、百を超えるメッセージ。由依は反射的に周囲に頭を巡らせる。壱成の姿は見当たらない。もう少し離れたところで電話しているのだろう。
メッセージは『話がしたい』『電話に出てくれ』『由依、頼む』と具体的な内容は何もない。それだけに、何か緊急事態が起きたのではないかと背中に汗が浮かんだ。
(もしかして愛衣に何か起きたとか……?)
彼女は妊娠していると言っていた。何が起きてもおかしくない。
震える指で電話帳を呼び出し、稔の番号を押す。電話はすぐにつながった。
「もしもし?」
『由依か!?』
急き込んだ稔の声が聞こえる。由依はスマホから耳を少し離し、できるだけ落ち着いた口調で問いかけた。
「そうだけど、愛衣に何かあったの?」
『ああ、愛衣なんだよ! あいつ信じられねえよ!』
「……はあ?」