エリート弁護士は生真面目秘書を溺愛して離さない
「あのとき壱成さんに、最初の願いは間違いじゃないって言ってもらえたから、私はここまで折れずに来られたんです。大変なこともいっぱいあったけれど、最後の最後で自分を嫌いにならずに済んだのは、壱成さんの言葉があったからです」

 たどたどしくも懸命に伝えれば、壱成は何かを堪えるように眉を寄せ、深々と嘆息して顔を近づけた。

「なんでそんなに可愛いんだ。抑えが効かなくなるだろ」
「あっ……」

 蕩けるようなキスとともに、壱成の手が由依の襟元をくつろげる。触れる指は火傷しそうなほど熱い。そうだ、と由依は大切なことを思い出し、上目遣いで壱成を見つめた。

「私、明日の朝には弱ってる壱成さんを見られますか?」

 壱成はもう手を止めず、ただ不敵に笑って答えた。

「そんな余裕があるならな」

 その理由を思い知らされるのは、ほんのすぐ後の話。

 ——彼女に余裕があったかは、彼だけが知る。
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