この悲しみも。……きっといつかは消える
 ユリアナはレイウッド領主のアダムス家の遠縁の娘だ。

 これまでは代々の当主の妻は一族の中から選ばれてきた。
 今は亡き先代ご当主夫妻の奥様のグロリア様は、バークレー家出身だ。
 一代空けて我が家門から再びと、周囲の期待は高まっていた。


 ユリアナだって、期待が無かったわけではない。
 一族の中の少女の中では、自分が頭ひとつ抜けている。
 順当に行けば、自分が選ばれるだろうと思っていた。
 学院の休みで領地に帰ってきたスチュワート様が姿を現すと、領内の少女達は沸き立つ。

 当時のユリアナはまだ11歳で、スチュワートとは5歳離れていたが、婚姻する頃には丁度良くなる。
 そう何度も両親から刷り込まれていたのに。
 王命が出て、スチュワートの婚約者が隣のウィンガムの娘だと決まった。


 両親の、特に母の嘆きはユリアナ本人以上だった。
 

「こんなのおかしいわ……絶対に認められない」


 初めて、母を愚かだと思った。
 貴女が認めなくても、誰が気にするのだ。


 その後直ぐに当主夫人のジュリア様から、嫁入りしてくるミルドレッドの専属侍女になって欲しいと、連絡が来た。
 なって欲しいは、なるようにと言う命令だ。
 拒否は出来ない。

 ユリアナが結婚を望む時が来たら、アダムス本家から嫁に出す。
 それをありがたく思えと言いたげに、付け加えられていた。


 7年後、披露宴で初めて挨拶をしたミルドレッドは綺麗な女性だった。
 ユリアナでは太刀打ち出来ないひとだ。

 
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