この悲しみも。……きっといつかは消える

第31話

 国王陛下の住まう王城のお膝元、王都は大きく4つの東西南北の区域に分けられている。


 前夜の打ち合わせ通り、マーチ兄妹とイアン・ギャレットは、北区域の12歳から15歳の平民の子供達が通う北区中等学校、通称北校へとやって来た。


 この学校の教師、テリー・スミスはウィラード・フェルドンの元同級生で、彼との面会の約束を取り付けていたからだ。
 テリーはウィラードとは幼馴染みだったと言うので、うまく行けば彼から話を聞くだけで、この調査は終えられるかもしれないと、ジャーヴィスは言う。


 ミルドレッドは北校に行く馬車の中で、ジャーヴィスからスチュワートの双子の兄と仮定された男性の名前がウィラードであると、聞かされた。

 ウィラードはアダムス本家の長男に付けられることが多い。
 それはつまり……兄達の仮定通り。

 スチュワートは次男だったと、いうこと。
 ふたりが誕生し、名付けられた時には、後継者はウィラードだと決められていて、夫は一族のどこかの家門に養子に出されるはずだったと、いうこと。
 それがどの時点で逆転し、実の母は離縁され、兄は家系図から消されてしまったのか。


「まだ赤ん坊だったウィラードが、何かをしたわけではないだろう。
 母親が何かしらの問題を起こしたとしか、思えないね。
 スチュワートを手放したくなくて、養子縁組の邪魔をしたのなら、連れて出るのはスチュワートだったはず。
 その経緯をメラニーから聞いていたウィラードが友人にそれを明かしていたなら、話は早いよ」

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