この悲しみも。……きっといつかは消える
 北校前でイアンと落ち合い、3人で守衛にギャレットだと名前を告げると、門は開かれた。
 既にスミスが面会者の名前を届け出てくれていたようだ。


 昼休みの時間でしかお話は出来ませんと、予め聞いていた。
 子供達でごった返す廊下を進み、事務手伝いの女性に応接室へ通されて、暫くすると眼鏡をかけた男性が現れた。


 一番先にミルドレッドが立ち上がって、慌てて後のふたりも起立した。
 見るからに上級国民の3人の姿にスミスは驚いたようだった。
 そして、以前来た調査員が来るのだと思っていて、自らが校舎入口まで迎えに出なかった無礼を早口で詫びた。


 そんなことは気にしなくてもいいと言うように、イアンが柔らかく微笑んだ。
 自分ではなく、約束を取り付ける時点で部下の調査員を赴かせるのは、いつものことだ。

 
 後日の約束で、相手はどこまで話すかを、当日までに考えている。
 ある程度のやり取りも頭の中でシュミレーションしている人間は多い。
 そこで想定していた人物とは違う人間、つまり自分が聞き取りに現れると、その予定が崩れ思わぬことを口にしてしまう。
 それがイアンの手口だ。


 特に今日は、明らかに貴族階級のふたりが一緒だ。
 スミスの焦り具合を見ると、昨夜ジャーヴィスがミルドレッドが平民になるのは無理だと言った意味が良く分かる。

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