この悲しみも。……きっといつかは消える
「はじめまして。
 お忙しいスミス先生にお時間をいただけて、改めて御礼申し上げます。
 午後の授業が始まる前にはお暇致しますので、早速本題に入らせていただいても?」


「は、はい、勿論です。
 ウィラード・フェルドンのことをお聞きになりたい、でしたね」


 イアンが頷くと、スミスは座り直して語り始めた。



     ◇◇◇



「私の実家はフェルドン家の隣でした。
 ウィラードの母親がずいぶん年上のマイケル・フェルドンに嫁いで来た時は、近所ではちょっとした騒ぎになったと、母から聞きました。
 フェルドンは50歳前の初婚で、妻になったメラニーさんは美しく……
 その上小さな男の子を連れた女性だったからです。
 フェルドンは貴族階級が多く住む南区で店舗を構えていましたが、住居は自分が生まれ育った北区からは出なかったのです。
 それで北区では、本人には成功者だと煽てて、裏では悪徳高利貸しなんて陰口もたたかれて。
 妬みもあったのでしょうが、借金のかたに貴族の出戻りを買ったと言われていました」

「現在、フェルドン金融は廃業していますよね?」

「はい……ウィラードが後継ぎになるのかと思ってましたが、彼が中等学校を卒業する前に…… 
 ウィラードから聞いた話では、契約の見直しを頼んできた貴族から招待された夕食の帰りに、フェルドン夫妻は強盗に襲われて命を落としました」

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