この悲しみも。……きっといつかは消える
 スチュワート・アダムスとミルドレッド・マーチは政略結婚だった。

 スチュワートのレイウッド伯領とミルドレッドのウィンガム伯領が隣り合う双方の領地を、国を挙げての一大事業の鉄道が走ることが8年前に決定されて。
 当時16歳のスチュワートと12歳のミルドレッドの縁組みが王家から持ち込まれたのだ。
 それは拒否できない縁組みだ。
 

 領地が隣り合っていても、両家はそれまで取り立てて親しくしていなかった。
 まだ社交界で顔も合わせていない子供達など特にそうだ。


 レイウッド伯爵家の兄弟スチュワートとレナードは、16歳と13歳。
 ウィンガム伯爵家の兄妹ジャーヴィスとミルドレッドは、20歳と12歳で。
 微妙に年齢差があって幼い頃から遊んでいたわけでも、共通の友人が居るわけでもない。
 王家からの縁組みでもなければ、まずは結ばれなかったふたりだった。


 4つの年の差のスチュワートとミルドレッドの交流も本格的に始まったのは、彼女が16歳になった頃からだ。

 ミルドレッドが王都の女子高等学院に進学せずに、ウィンガム領内の子女が通うマナースクールを選んだこと。
 スチュワートが8年間在籍した王都の貴族高等学院を卒業し、レイウッドへ戻ってきたこと。


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