この悲しみも。……きっといつかは消える
 ミルドレッドが隣のジャーヴィスを伺うと、彼が小さく頷いた。
 これが理由だ。


 ウィラードは生まれながらに、足が悪かった。
 それは成長過程の這い這いや掴まり立ちの頃に発覚したのだ。
 それで彼は後継者から外された。


 生まれながらと言うことは、出産の時にトラブルがあったのかもしれない。
 双子の出産は母体にも新生児にも、通常より負担がかかる。
 事前から双子であると、医師も産婆も気付いていなかったのなら。
 その混乱の中では、無事に先に生まれた赤子の足のこと等、誰も気にしていなかった可能性は高い。



「ウィラードに最後に会ったのは、3年前です。
 彼はもう北区から引っ越していたんですが、私の父の葬儀に来てくれたんです。
 住所を聞くのを失念してしまったんですが、結婚して、子供がもうすぐ生まれると言ってました」


 生まれる前だから、それが娘でメラニーなのかは確認出来なかった。
 午後の授業前の予鈴が鳴った。

 
「一度ゆっくり会おうと約束していたんですけど。
 ウィラードに会うことがあれば、連絡を待ってると伝えていただけますか?」


 こちらこそ、彼からの連絡が欲しいんだとは、イアンは言わなかった。
 その代わりに。


「すみません、最後にもうひとつだけ。
 彼は妻について何か言っていましたか?」

「えー、何だっけかな……ローリー?
 違うな……あぁ、ローラだったかな。
 控え目ないい子だって話してました」

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