この悲しみも。……きっといつかは消える
 彼はやはりウィラードを通じて、ローラとも親しくしていて、彼女が働いていたお店の……




「次は一緒に行って、君のドレスを注文しよう。
 好きなデザインを考えていて」


 王都へ一緒に行こうと、言ってくれた時の。
 喜んだ自分が、彼の頬にキスした時の。
 スチュワートの笑顔がうまく思い出せない。



 最後まで言葉にならなかったミルドレッドに、イアンは話題を変えた。


「スミスに会えて、収穫はありましたね。
 これで彼への援助は、ご主人が行っていたのではないことが判明しました」

「え……どうしてですか?」

「当時15歳のご主人には、ウィラードの生活を支えられる資金はないでしょう?」

「……その通りです、よくよく考えてみたら、学生だった彼にはそんな自由になるお金はない……
 でも、スチュワートじゃないとしたら?」

「バーナード・アダムスしか居ない。
 当時のレイウッド伯爵、双子の父親だよ。
 彼は母を失った息子を引き取ることは出来なかったが、援助をした。
 それを届けていたのがスチュワートだったんだ」

 答えた兄に、イアンが続ける。



「実の父は、母子を見捨てていたんじゃないんですよ、多分。
 メラニーは、平民だが裕福なフェルドンと再婚した。
 フェルドンは、ウィラードを連れて嫁に来ることを拒否しなかった。
 ウィラードは、義理の父から冷遇されなかった。
 ふたりは、きっと実家のコーネルに居るよりも大切にされていて幸せだった。
 高等学院に入学したご主人に、兄に会うように居場所を教えたのは父親だったんです」


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