この悲しみも。……きっといつかは消える
「えぇ、ここでお針子をしてくれていたローラ・フェルドンのご主人のウィラードさんから、預かっていた契約書?誓約書かしら?
 中身は見ていないので、はっきりしませんが。
 あの方、昔契約書を反古にされたそうで、そう言う類いのものは手元に置かずに、信頼出来る人に預かっていて欲しいと仰ってくださって。
 伯爵様御本人からウィラードさんとのご事情も伺っておりましたので、こうなってしまったからには、お手元にお返しするべきだと思っておりましたのに……」

「ウィラードから預かっていた書類をレイウッド伯爵に返す?
 こうなってしまったから?
 ローラに預けずに、今もお持ちなんですか?
 彼女が伯爵に会いに行くことは、聞いていらっしゃらないんですか?」


 自分は出来るだけ黙っていると言っていたイアンが前のめりになって、早口になっていた。
 エリンは顔をしかめたが、それはイアンに会話に割り込まれたからではなかった。

 何故なら、彼女は本当に不審そうに、イアンに尋ねたからだ。



「ローラが伯爵様に会いに行くとは、一体いつのことでしょうか?
 彼女は3ヶ月前の火事で、ウィラードさんと亡くなりましたのに」

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