この悲しみも。……きっといつかは消える
 それでふたりはすれ違うことなく、交際が始まった。
 婚約当初とは違い、20歳と16歳なら。
 それは結婚するには丁度良い年齢差となっていた。
 
 初対面のようにふたりは改めて出会い、そして恋に落ち、2年後結婚した。
 今から15ヶ月前の話だ。
 それから半年後にスチュワートの両親、前レイウッド伯爵夫妻が続けて病死して、スチュワートが後を継いだ。

 義父バーナードに先立ち亡くなった義母ジュリアは、スチュワートの母メラニーが離縁されてから1年後に、後妻となりレナードを産んだ。

 アダムス家が持っていた子爵位はバーナードの弟リチャードが継ぎ、その後継者であるカールトンもレイウッド領内で領主の補佐役となっていたので、レナードは新聞社に入社した。

 そして来年には、恋人のサリー・グレイと結婚すると予定されていたのだが。




 レイウッド領主、スチュワート・アダムスの不慮の死亡により。
 次男のレナード・アダムスが後継者となり。

 異母兄の妻だったミルドレッド・アダムスと再婚するように、と。


 この王家からの申し渡しが、地方行政査察官のベネディクト・シールズの元に届けられたのは、スチュワートの葬儀から僅か1ヶ月半後のことだった。


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