この悲しみも。……きっといつかは消える
 そんなある夜。
 使用人の女に、温室に夜だけ咲く花があって見頃ですよと教えて貰った。
 そしてお酒まで手渡されたので、暇だったから見に行った。
 そこにはカウチがあって、先に飲んでいる男が居て……
 ふたりで飲み交わす内に盛り上がって。

 後から寝た相手が次期当主のレナードだと気付いたが、まあいいか、と。
 彼の方も気まずそうにしていたが、一度結ばれた男女関係だ。
 それからも、時々抱かれるようになった。



 レナードがミルドレッドと再婚する話は、彼から聞いた。
 彼女のことは仕方ないから、あの年増の愛人だけは追い出してよとお願いした。


 このままローラとして、レナードの愛人生活も悪くないかと思えた。
 そんな日々が続いていくと思っていたのに。




 エリン・マッカートニーから、連絡が来た。


 ギルモアに帰ると騙したエリンから、レイウッドに連絡が来るわけがないことも。
 それがローラ・フェルドン宛になっていることのあり得なさにも、焦っているマリーは気が付かない。
 もう自分はマリーではなく、ローラだと錯覚していた。



 エリンからの手紙には、ウィラードから預かっていたものを貴女に返したい、と綴られていて。


 それをどうしても手に入れたいマリーは、邸の外へ誘い出された。

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