この悲しみも。……きっといつかは消える

第5話

 スチュワートの葬儀が終わって6週間が過ぎた頃。

 夫との愛の証であった我が子を失ったミルドレッドがようやく私室から出られるようになった頃だった。


 奇しくもミルドレッドの家族である夫と赤ん坊の命日は同日となった。

 スチュワートの破壊された遺体にショックを受けたミルドレッドが失神をして。
 彼女は大理石の床に倒れ、頭と腰を強く打ち付け……子供は流れた。



 心身ともに傷付いた当主夫人が、夫の葬儀に参列出来なくても、それを責める者は居なかった。
 若きレイウッド伯爵夫妻の仲の良さは有名であったし、4ヶ月が過ぎて悪阻が治まり、これなら心配なかろうと発表された彼等の第一子の妊娠は喜びを持って、領内で広まっていたからだ。

 
 それと共に。
 領主様のスチュワートの死因が領民を助けようとしたから、と言うのが。
 益々領民達からの尊敬と同情を集めて、ショックで流産したミルドレッドへの眼差しは途轍もなく温かいものとなっていた。


 待望の子供を喪ってしまったこと。
 リチャードからの暴言を覚悟していたミルドレッドだったが、珍しく何も責められず。
 ゆっくり身体を休めるようにと寝室には、叔父から何度も花が届けられた。

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