この悲しみも。……きっといつかは消える
 働いている給仕や料理人も急遽休ませたから、お茶を飲む為だけにウィンガムから使用人を連れてきた。



 そして、ここにローラ・フェルドンの名前を騙っているマリー・ギルモアを呼び出した。
 彼の手元には、エリンがウィラードから預かっていた誓約書が置いてある。



 誓約書の作成者は、ウィラードだった。
 娘の出生証明書を添付した、正式な形式の誓約書だ。
 誓約相手は実の父親だったバーナード・アダムス。

 
 その内容は『メラニーがレイウッド伯爵アダムス家の娘だと要求しない』という誓いと。
 もし自分達夫婦に何か有った時だけ、娘に援助を願う、というものだ。


 これを読むと、ウィラードが中等学校を卒業して働き出してからは、アダムスから援助を受けていなかったことが分かる。
 エリンが語った話からも、スチュワートとウィラードは、援助をする者、される者の関係ではなく、対等に交流していたことも判明した。


 この国の契約書や誓約書の類いは、作成した方が同列に並べられた右側の署名欄にサインをする。
 ジャーヴィスは、左側に記されたバーナードのサインと右側に記されたウィラードのサインを確かめた。

 
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