この悲しみも。……きっといつかは消える
第37話
「イアンにも、ここまで付き合って貰って悪かった。
商会の仕事には支障がないのか?」
「最後まで付き合わさせてくださいよ。
商会の仕事は、部下に随時報告をさせています。
普段は好きに動いて貰って、それで問題が起こったら。
最後に責任を負うのが、上に立つ者の仕事だと教えてくれたのは、貴方です。
それを今も、実践しているだけです」
「……お前はこんな時だけ、丁寧な言葉遣いになる。
賭けに負けても、容赦しないからな?
今夜はとことん飲むつもりなんだ」
イアンは、もう一仕事を終えたかのようなジャーヴィスの物言いに笑って見せたが、その心中は複雑だった。
彼はここに辿り着くまでを思い出していた。
王都で人気のドレスデザイナー、エリン・マッカートニー。
彼女には、かなり助けられた。
「最後に伯爵様にお会いした時の……
仰っていたお言葉を、ぜひ奥様にお伝えしたいのです。
『今回、本当は妻も連れてきて、ウィラードとローラに会わせようと思っていました。
結婚前に自分が双子だと、どうしても話せなかった。
婚約を解消されるのが怖かった私は、臆病者です。
今日は彼女のドレスを作っていただきたかったのですが、妻は私の子供を身籠ってくれましたから、来年以降の楽しみにさせて貰います』と……
このように、伯爵様は仰せになっておられました」
商会の仕事には支障がないのか?」
「最後まで付き合わさせてくださいよ。
商会の仕事は、部下に随時報告をさせています。
普段は好きに動いて貰って、それで問題が起こったら。
最後に責任を負うのが、上に立つ者の仕事だと教えてくれたのは、貴方です。
それを今も、実践しているだけです」
「……お前はこんな時だけ、丁寧な言葉遣いになる。
賭けに負けても、容赦しないからな?
今夜はとことん飲むつもりなんだ」
イアンは、もう一仕事を終えたかのようなジャーヴィスの物言いに笑って見せたが、その心中は複雑だった。
彼はここに辿り着くまでを思い出していた。
王都で人気のドレスデザイナー、エリン・マッカートニー。
彼女には、かなり助けられた。
「最後に伯爵様にお会いした時の……
仰っていたお言葉を、ぜひ奥様にお伝えしたいのです。
『今回、本当は妻も連れてきて、ウィラードとローラに会わせようと思っていました。
結婚前に自分が双子だと、どうしても話せなかった。
婚約を解消されるのが怖かった私は、臆病者です。
今日は彼女のドレスを作っていただきたかったのですが、妻は私の子供を身籠ってくれましたから、来年以降の楽しみにさせて貰います』と……
このように、伯爵様は仰せになっておられました」