この悲しみも。……きっといつかは消える
 それは、ミルドレッドが居たから。
 伝えられた言葉だ。
 訪ねてきたのが、ジャーヴィスと自分だけだったなら。
 多分、エリンは言わなかった。


 エリンから伝えられたスチュワートの言葉を聞いて、静かに涙を流したミルドレッド。
 きっと彼女は、夫からの愛を改めて受け取ったのだろう。



「やはり、まだ勝てそうもないな……」


 スチュワートには、まだ勝てない。
 16の頃から8年だからな。
 イアンがこぼしてしまった苦笑に、ジャーヴィスが尋ねる。


「何の話だ?
 勝算はこちらのものだろ?」

「……別の話だ」



 今は、今はまだ。
 イアンは、自分がミルドレッドに何も言えないと、弁えている。


 それならせめて、この件は最後まで関わらせて欲しい。





 レストラン入口のガラス張りのドアが開く。

 迎えに行かせた馬車に乗って、やって来たマリーが店内に居た男ふたりの姿にたじろぐ。

 多忙なエリン・マッカートニー本人が来るとでも思っていたのか。



 でも、それは一瞬で。
 マリーは、美形のふたりに媚びた笑顔を見せた。



「わ、わたしローラ・フェルドンだけど……
 貴方達、エリンさんの?
 ここで合ってる?」


 
< 134 / 229 >

この作品をシェア

pagetop