この悲しみも。……きっといつかは消える
 初対面のジャーヴィスとイアンに、マリーはローラと名乗った。
 これでまた、ふたりを騙した罪が加わった。


 
 ジャーヴィスとイアンは、完璧な愛想笑いを浮かべて。
 ふたりは同時に立ち上がり。
 頬を染めるマリーに、各々手を差し出した。

 それに誘われるように、マリーが店内に入ってくる。



 そして今夜の酒は、『マリー』に賭けたイアンが奢ることに決まった。



     ◇◇◇



 約1ヶ月半振りに、ミルドレッドがアダムス邸に戻ってくることになった。


 その知らせを受けて、レナードは叔父のリチャードに連絡した。
 叔父から一喝されれば、強情なミリーも素直になるだろうと。
 それで泣き出した彼女に優しくしてやればいい。
 これからはリチャードにムチを振るわせて、自分が甘やかしてやる。



 ウィンガムへは何度も使いを出した。
 その度に、まだ臥せっていると返事が来て、強引に連れて帰ることは叶わなかった。


 ミルドレッドが戻ってきたら、今度こそ彼女とやり直す。
 サリーには、多めに手切れ金を渡して、この家から出て貰う。
 ……それと酔った時に目の前に居たから、つい手を出してしまったローラ。

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