この悲しみも。……きっといつかは消える
 ある夜ユリアナが、今夜は月が綺麗なので、温室にお酒を用意しましたから、なんて言うから。
 お部屋で飲むのとは気分が変わるでしょう、だったか……


 ローラとのことは、絶対にミルドレッドには悟らせないようにしないと。
 スチュワートの愛人だった女だ。
 手を出すつもりなんかなかったのに、これじゃ……
 ミルドレッドが嫌悪した畜生に、なってしまった。


 だから早く追い出したかったが、意外と体の相性が良かったことに、独り寝の寂しさも加わって。
 ずるずると関係を続けた。


 しかし、ミルドレッドが戻ってくるなら。
 ローラにも纏まった金を渡して、王都へ帰って貰って。
 それでもし、別れたくないと言うなら。
 兄と同じ様に、囲ってやればいい。
 領地では、ミルドレッドと。
 王都では、ローラと。
 あの真面目そうに見えたスチュワートだって、娘まで作っても隠し通せたんだ。
 俺に出来ないはずはない。


 ミルドレッドに向かって、自分本位だと責めた彼は、自分の自己中心的な考えに気付かない。

 
 ミルドレッドが帰ってくる日を、アダムスの誰もが待ち望んでいた。
 態度に出さないようにしていたが、一番心待ちにしていたのはレナードだ。
 久し振りに会うミリーは相変わらず綺麗で、サリーやローラとは格が違う。
 やはり当主夫人に相応しいのはミルドレッドだけだと、改めて認識した。
 ……それなのに。


 彼女はひとりではなかった。
 兄のジャーヴィス・マーチが付き添っているのは理解出来る。


 だが余計な男が付いてきた。
 披露宴では、ウィンガムの若い男達をチェックしていたレナードが、初めて見る顔だ。

 マーチの縁者でないとしたら、こいつは誰で、どうして今日ここに来た?


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