この悲しみも。……きっといつかは消える
 ギャレットとは学年が離れているレナードが、不審者を見るように彼を睨み付けているのは、ギャレットのことを知らないからだ。

 ただカールトンにしても、未だにジャーヴィスとギャレットの付き合いが続いていたとは知らなかったが。
 あの頃皆が恐れていた強面の教師に、平気で歯向かったふたりが揃っているのを見て、嫌な気持ちになった。
 張りぼての父等、ふたりにかかれば……


 そしてそれは、父当人も同じように感じたようで。
 自分より大きなものには、先に強く出ようとする性格が露になった。

 あんなに、今日は大声をあげないでくださいと、釘を刺していたのに。



「なんだ、こいつは誰なんだ!
 関係無い者をどうして連れてきた!」


 早速ミルドレッドを怒鳴り付け、イアン・ギャレットを指差した。
 先に大声を出せば、誰もが言うことを聞く。
 そのやり方を、リチャードはずっと通してきた。
 それを教えたのは、母のグロリアだ。


 母はその手法で、アダムス本家を牛耳った。
 父ドナルドも、兄バーナードにも、それで通した。


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