この悲しみも。……きっといつかは消える
「レナード様、貴方も何もご存知ないのですね。
 次期当主なのに、お気の毒に。
 わたくしも何も教えられていなかった……
 だから、説明は出来ません。
 叔父様かカールトン様なら、メラニーちゃんの父親のウィラード様が誰なのか、お答え下さると思います」



 ミルドレッドから名前を出されたふたりは、対照的だった。


 リチャードは、怒りに顔を赤く染め、彼女を睨み。
 反対にカールトンは青ざめて、レナードの視線から顔を背けた。
 今、この場で声をあげているのは、レナードだけ。


「叔父上、ウィラードって誰ですか?
 カールは知ってて、俺は知らないって、何のことですか!
 どうして黙っているんですか……
 ……都合が悪いと黙るのか!
 カールでもいい! 何とか言えよ!」

「……ウィラードは、スチュワートの双子の兄だと聞いた」


 父のリチャードが、未だに何も言わないので、カールトンが言い出した。


「本家の長男のウィラードが今何処に居るかは、俺は知らない。
 ただ何か、母親が問題を起こして離縁されて。
 ウィラードを連れて、ここを出た、って。
 父上からはそれだけしか聞いていない。
 去年クラインが産まれた時に、ウィラードと言う名前は付けたら駄目だと言われて……
 それだけしか聞いていない」

 
 それだけしか聞いていないと、繰り返すカールトンの説明は、レナードにとっては言い訳にしか聞こえなかった。




「それでも、スチュワートと同じで、俺の異母兄の話だろ!
 どうして叔父上も、カールも!
 父上も、兄上も……そうか母上もか……
 俺にだけ、教えてくれなかった……」

「……」

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