この悲しみも。……きっといつかは消える
「メラニー様の面倒は、ユリアナが主に見ております」


 ハモンドがメラニーに様を付けたのは、スチュワートの姪だと知ったからだ。
 今まではなんとなく『あの子』で、一同通してきた。


 母親のローラだと偽っていたくせに、マリーはメラニーの世話をしなかった。
 持参した数少ない子供服も、全て中古品のようで、メラニーはいつも身体より大きめの古ぼけたワンピースを着せられていた。
 マリーは娘の食事の好みを聞いても、よく分かっていなかった。
 それで料理上手なユリアナに幼女の喜びそうな物を作らせると、メラニーは彼女に懐き、ずっと側を離れない。



「確か、ミルドレッドの専属侍女だったな。
 では、そのユリアナ・バークレー嬢も一緒に。
 懐いているなら、その方がメラニー嬢も安心だろう」


 
 正直、ジャーヴィスは何の理由で、ユリアナをこの場に連れ出すか悩んでいた。
 だが、幸運なことに彼女がメラニーの世話をしていて、懐いているのなら……運命の偶然に感謝した。

 

     ◇◇◇



 ユリアナは、リチャードの母グロリアと同じバークレーの娘だ。
 本当はここには呼びたくなかったが、いつも曖昧な対応しか出来ない愚鈍な侍女だったので、邪魔にはならんだろと、リチャードは仕方ないと諦めた。
 
 
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