この悲しみも。……きっといつかは消える
 カールトンはとにかく下を向いていて、その表情は読み取れないが、アダムスの男達の三者三様の様子にイアンは呆れていた。


『アダムスは一枚岩』とミルドレッドは言うが、それは何かを隠す為だ。
 本当の意味で団結している訳じゃない。


 何らかの理由で女性を蔑視しているリチャード。
 自分のことしか考えていないレナード。
 そして、反対に何を考えているのか分からないカールトン。


 絶対に彼女を、こいつらから引き離すと、イアンは改めて決意した。



 しばらくすると、ハモンドがユリアナとメラニー、そしてマリーを連れてきた。


「お前は!
 何勝手な真似を……」


 マリーの姿を見るとレナードは、そう言いながら立ち上がって腕を振り上げようとしたので、イアンがそれを取り押さえた。


 レナードと関係があることを、マリーから聞いていた。
 彼女は、ジャーヴィスからの言い付けを守って、ちゃんと今日までレナードには、何も話していなかったのだ。


 そんなマリーが、目の前で暴力を振るわれるのを見たくなかったし、ミルドレッドやメラニーにも見せたくなかった。



 イアンに後ろ手に捻られて、床に押し付けられたレナードが離せと、喚いていた。
 イアンは暴れる彼を制圧しながら、反対に同情した。


 ミルドレッドと言う本命の女性の前で、みっともない姿をさらけ出すこの男が、本当に哀れだった。

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