この悲しみも。……きっといつかは消える
 野蛮人と言われたレナード本人は捻られた手首を痛そうに擦っていて、文句のひとつも言えないようだったが。
 リチャードは青筋を立てて怒っていた。


 ギャレットなんて、貴族の家名に有った気がしなかったが。
 さっきの身のこなしで、こいつがそれなりの訓練を受けているのがわかった。
 実戦想定の生身の攻撃は、普通の貴族なら自分から求めない限り、学ばないからだ。
 騎馬戦で盾と槍や剣を用いて、正々堂々と一対一で対峙する。
 それが貴族の戦い方で、戦場での肉弾戦は平民の仕事だ。


 身元が怪しい男だと思っていたが、こいつが平民なのは、確定だ。
 だったら、恐れることはない。
 どうせ、この男の調査能力等たかが知れている。



「お、叔父上、もういいです。
 ついカッとなってしまって。
 話を進めてください……」


 レナードがリチャードに言った。
 叔父に庇われるだけ、ミルドレッドの前で惨めな自分を晒すだけだ。
 だが、この男だけは絶対に許さないと、イアンを威嚇することだけは忘れなかった。



     ◇◇◇



「では先ず、私は調査業を生業としております。
 今回はレイウッド伯爵様の奥様から、ウィンガム伯爵様を通じて依頼されました。
 調査内容の要点は、3つ」


 そう話を切り出したイアンは、皆の前で指を3本立てて見せた。


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