この悲しみも。……きっといつかは消える

第42話

「奥様が提示された、その前提を基に私は調査を開始致しました。
 先ずは、ローラが名乗ったフェルドンから当たることにして。
 伯爵様の実母メラニー・コーネルが平民のマイケル・フェルドンと再婚したことを、当時近所に住んでいた住民から聞き込みました。
 そして彼女がウィラードと言う男児を、連れていたこと。
 再婚後、暴漢に襲われフェルドン夫妻が亡くなったこと。
 天涯孤独となったウィラードを援助したのが前レイウッド伯爵であること。
 父親から援助金を届ける役目を仰せつかったのが、当時高等学院在学中だった伯爵様だったことが、判明しました」


 相変わらず、ここまで流れるように説明していたイアンはここで、一旦言葉を切った。



 ずいぶん省略した説明だが、これが正解だなと、ジャーヴィスは感心した。
 ここでスミスの名前を出せば、そんな平民の言うこと等云々をまたリチャードが喚き、無駄に時間を取られる。
 この3人さえ、確実に連れて帰れるなら。
 一刻も早く、ここから出たい。



「説明するのは、お前に任せた。
 俺は最初と最後だけ、でしゃばらせて貰うよ」


 レイウッドへ向かう馬車の中でイアンに伝えた。
 口の上手いイアンなら、リチャードが隠そうとしているバーナードとメラニーの離婚の理由も引き出せるだろう。
 それは本来ならスチュワートが居なくなったアダムス等、自分には全く関係無いことで、どうでもいい過去だ。


 しかしミリーにとってはスチュワートは過去ではない。
 だからイアンも、彼女の前でそれを明らかにさせたいのだ。




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